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「せーーんぱいっ！」
「どうしたの？」
「話したいことあって来ちゃいました！」
わざわざ２年の階まで来たチーノくん。もう何回も経験しているが、こうやって話があると来てくれるのはつまり……力を抑える方法について話がある、という事だ。
振り返ってみれば８人もそうやって声をかけてきたのだ。直感で分かってしまう。
「恐らく……ハルキ先輩に話に来たん、僕が最後ですよね？」
「あーー…そうかも？」
「へへ、先輩は人気者やもんね。他のヤツらと違うことできればええねんけど……」
うーん、と口元に手をやって彼は何かを考え始めた。行動に移さなくても、言葉で伝えてくれたらそれだけで嬉しいのに。
でもチーノくんにはチーノくんなりの考えがあるのかも。黙って彼の行動を眺めていると、何かを決めたように私の目の前に立ちはだかった。
「せ、せんぱい」
「うん？」
「僕は昔の先輩に執着しすぎてました……もちろん思い出してほしいんやけど、それはいいんです。ハルキ先輩に会って、僕は先輩っていう存在が好きなんやって……誰よりも先輩の事を愛しとる自信があります！僕とずっと一緒におりましょ！」
息を切らしながら言い切ると、そのまま勢い任せに私の体を抱きしめた。
チーノくんに抱きしめられるのはコレで２回目だ。彼は距離感がバグっているから、あまり緊張しなかった。ふわりと香る匂いに懐かしさを覚えるような気分である。
「先輩、僕に比べると全然ちっさくて折れそ……」
「折らないでね？」
「今は折らへんよ！……──先輩、すき、ハルキせんぱい……」
少し切なそうに、彼は私の名前を何度も呼んだ。
「………………チーノくんは、一途なんだね」
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作者名：かえち
| 作成日時：2023年3月12日 20時
