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「ハルキちゃぁん〜」
「……？」
「どうも、僕です」
「あ、鬱くんか…」
不意に名前を呼ばれたかと思ったら、後ろに鬱くんがいた。彼は時々こうやって音沙汰もなく現れるから驚いてしまう。
ヘラヘラとした顔つきを保ったまま、「歩きながら話そ？」と私を手招きした。断る理由もないので大人しくついていく。
「別になんも用事ないわけちゃうよ？」
「そうなんだ。てっきり適当に呼んだだけかと」
「いやいや今日は違うから！エーミールから聞いたこと話そぉ思ってん。ショッピくんとか、もうハルキちゃんに話したと思うけどね」
その話を聞いて私は正直意外だった。エーミール先輩に私の事情を話された後、鬱くんは絶対に私と話をしないと思っていたからだ。
「なんかよう分からんけど、儀式みたいなんするんよね？俺ハルキちゃん１人だけ見るっていうのできそうにないわ…。でもハルキちゃんの事は好き。それで閃いちゃったんよ。俺がキミを救う代わり、キミも俺が困った時に助けてほしい。お互いがお互いを利用してな。もちろん好きな人は作ってええよ？好きなよーに遊んでもええ。どうかな？」
形だけで愛し合う、という事だろうか。
確かに鬱くんはモテるし、１人に絞れないとも言っていた。もし鬱くんを選んだ後に彼を求めるような事があっても、彼なら喜んで私に愛を囁いてくれそう。他に女の子はいっぱいいるけど、それでもいいって思っちゃうのかな。
「なるほどね。鬱くんらしい案だなぁと思ったよ」
「でしょでしょ？なんとしてもハルキちゃんを俺のハーレムに入れたいねん……！」
通常運転の鬱くんを見てふふ、と笑ってしまった。
鬱くんは……私が求める分だけ、愛を与えてくれそうだ。
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作者名：かえち
| 作成日時：2023年3月12日 20時
