１１．期待の作戦 ページ1
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私は今、緊張した面持ちでトントン先輩の後ろに隠れていた。手に手作りのお菓子を握りしめながら。
─遡ること１２時間前…まぁつまり深夜０時くらい、何年ぶりかにお菓子を作ってた。シャオロンくんに渡す用の、である。エーミール先輩からもらった粉末の薬を混ぜて、美味しそうな感じに作ることが出来た。
そして今。昼のうちに渡せないかなぁと、付き添ってくれたトントン先輩の後ろからタイミングを伺っている。
「シャオロン１人になったで。今なら行けるんちゃう？」
「と、トントン先輩もついてきてくれませんか」
「まぁ……心配やしな。ええよ」
ちょうど１人でいるタイミングに渡して、後でコッソリ食べてもらえば完璧だ。そしたらシャオロンくんも、私の血の味なんか忘れて探そうとしなくなるだろう。
「っシャオロンくん」
「んー？ え、ハルキちゃん！……と、トントンやんけ」
「俺に気付いて声のトーン落としたな」
「いーや別にぃ？てかどしたん２人して」
トントンとも仲良かったんやっけ？と私たちを交互に見ながら不思議そうに囁いた。心做しかシャオロンくんが付けている豚のピンも同じ顔をしてるように見える。
そんな彼に、手元のお菓子を差し出した。すると最初はキョトンとしていたが、渡されたのがお菓子だと分かると満面の笑みを浮かべた。
「これ手作り！？俺にくれるん！？」
「うん。よかったら後でコッソリ食べてほしいな」
「もちろん……！ええ、ホンマにうれしい……絶対大事に食べる。ありがとね！」
それはもうニッコニコの笑顔で喜んでくれたシャオロンくん。少しの罪悪感はあったが、私という存在に固執しなくてよくなる事に比べたらメリットの方が大きい。
「今度なんかお返しするから待っとって！」
「え！大した物じゃないし、その気持ちだけで嬉しいよ」
「まぁまぁ、俺がしたいだけやから。トントンもそう思うやろ？」
「や、急に振らんでよ。ビックリしたまじで…」
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作者名：かえち
| 作成日時：2023年3月12日 20時
