８．茶色の秀才 ページ29
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「ハルキさん、ちょっとええか」
「トントン先輩？わざわざどうしました？」
「今日の放課後空いとる？」
「空いてますよ」
「じゃあ保健室来てくれ」
また後で、とそう簡潔に言って、トントン先輩は帰ってしまった。先輩が私の教室に来るなんて初めてだから少しワクワクしたのに、一瞬で帰ってしまって残念だ。
＊
というのがちょっと前の出来事。私は忘れずに保健室へと向かっていて、そして今は到着した。中からトントン先輩の声と、もう１人誰かの声が聞こえる。
「失礼します〜…」
「お、来たきた」
「トントン先輩……と、えっと？」
目線の先には、明るい髪色の、穏やかで優しそうな笑みを浮かべた男の人がいた。誰だろう？と困惑気味の私に気付いてか、トントン先輩が口を開く。
「ほら、自己紹介せんと」
「アッ……初めまして、エーミールと申します。トントンさんとは同級生なので、多分先輩に値しますね」
「俺が前に紹介したいって言った奴やで」
トントン先輩の同級生と名乗ったエーミールさんは礼儀正しくてイメージ通りだった。そういえば、トントン先輩から紹介したい人がいると聞いた記憶がある。
さらに詳しく自己紹介してくれた内容によると、エーミール先輩は血に詳しいだけでなく、純血に有効な薬を自分で作っているのだと。トントン先輩曰く「そこら辺の研究者よりも優秀やし信頼出来る」らしい。
「そんなすごい人をどうして私に？」
「もう少し後に会わせる予定やったけど、実はショ………ンﾞンッ、とある人に圧かけられてなぁ」
「ハルキさんが最近困ってるようだと聞きまして……その、心当たりはありませんか？」
困ってる事……なんだろう、思いつかない。勉強の事？いや、わざわざエーミール先輩を紹介してくれたわけだし、きっと血関係かも。
「──あ、」
「！ ありました？」
「はい。最近の事ですよね。えっと…」
私はこう伝えた。「血を１度あげた人にしつこく探されている」って。
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作者名：かえち
| 作成日時：2023年3月1日 20時
