友達の居ない女子高生と大学生ウォヌさん

共通 ページ9

……ていうか、私が借りていたのはお兄さん本人の折り畳み傘じゃなくて、だからつまりお兄さんの名前はスニョンさんではなく、虎も別に好きな訳じゃなく……。



……結局、収穫なんて１つもなかった。何故かスニョンさんのことを知ってしまっただけ。





『……はぁ』





「どうしたの」





『えっ？い、いや……寒くて』





急に溜め息を吐く私を、少しお兄さんが気にかけたようだった。

お兄さんは感情の起伏が平坦だなぁ、何かを話すときも基本的に無表情に近い。



……うん。虎のシールに名前を書くにはやっぱり程遠いか。



溜め息の理由は別に寒いからじゃなくて、色んなことを早とちりして喜んでいた昨日の私が馬鹿みたいだったから。

今この瞬間、お兄さんの名前はなんていうんですかだなんて聞けるコミュニケーション力があったら良いのに。



……ゲームしよ。



すっかり乾燥してしまった手でスマートフォンをポケットから取り出して、いつものゲームを開く。



これ以外のゲームも沢山やっているけど、こういうちょっとした隙間時間にもできるゲームならこれが１番好き。





「お」





私がゲームを開いた途端、隣に立っていたお兄さんが私のスマートフォンの液晶画面を覗き込んできた。



いきなり物理的な距離が縮まって肩がビクリと跳ねる。





「俺もそれやってる」





『えっ、ほ、ほんとですか！』





微かに口角を上げて楽しそうに言ったお兄さんに、またもや大袈裟に反応してしまう。



共通のゲームをしている人だなんて周りに１人も居なかったから、つい嬉しくなってしまった。





「俺結構やり込んでて強いんだよ」





『あっでも、私もこれはサービス開始当初からやってて……』





「まじで。どれ、見して」





そう言って手を差し出してきたお兄さんに、自分のスマートフォンを手渡す。



お兄さんは私の所持しているキャラクターたちを見ると、「なかなかやるな」と眉間に皺を寄せた。





「うん。強い」





満足したようにそう言うと、お兄さんは私にスマートフォンを返してくれた。





『ありがとうございます……』





感激した状態でそれを受け取った。

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