友達の居ない女子高生と大学生ウォヌさん

虎のシール ページ6

入浴を済ませた後、まだ髪の毛も乾かしていないうちにベッドに飛び込んで、布団に顔をうずめる。



少しだけ布団から顔を上げれば、机の上に置いてある折り畳み傘が目に入る。



そして今日の一連の出来事を思い出して、もう一度布団に顔をうずめて、私は思いっきりバタ足をした。





『(いきなり話しちゃった……傘まで借りちゃった！)』





鏡なんて見なくても、今の私の顔が茹でダコくらい真っ赤になっていることはすぐに分かる。風邪をひいた時みたいに体が火照ってしまって仕方がない。



今までこんな気持ちになったことなんてなくって。誰かをこんなに想ったことなんてなかった。





『……好きです、お兄さん』





誰にも聞こえない大きさで、布団の中で呟く。



私はあの人の名前も知らないし、本当に大学生なのかも分からない。ただ単に傘を貸してもらっただけなのにこんなに好きになっちゃうだなんて、私が単純すぎるのかな。





『(……あ、名前……！)』





折り畳み傘を２本持ちするくらい几帳面な人なら、ひょっとしたら自分の名前とかも傘に書いてるかも！



私は起き上がって、せっかく綺麗に折り畳んだ傘の留め具を外して室内だけど傘を差す。



ほんの少し背徳感があるけど……。





『名前……なまえ……あっあった！』





突然の思いつきの行動だったけど、なんと、傘の持ち手の部分に可愛らしい虎のシールが貼られていて、そこにハッキリと【スニョン】という名前が書かれていた。





『……スニョン。珍しい名前……』





頭の中でその名前を何度も唱えてみる。



スニョン……そっか、スニョンさんっていうんだ。



虎のシールが貼られてるけど、虎が好きなのかな。あの風貌でこのシールって……クールに見えて意外と可愛い人なのかもしれない。





『…………へへ』





何だかお兄さんの中身を少し覗けた気がして、１人でニヤニヤと気味の悪い笑みをしばらくの間浮かべていた。





あ、髪乾かさなくちゃ。

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