ハナミズキ3 (ページ10)

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3学期が始まって数日

村上先生が学校を辞めたという衝撃は、少しずつ落ち着いてきていて

新しいテレビドラマのこととか、茶道部の部長が登校拒否気味だとか、生徒の興味は違う話題に移ってるみたいだった

あたしは、変わらず学校へ通って、たつと一緒に下校する毎日

…………なんだけど

村上先生がいなくなってから、たつの様子がおかしい

口数が減ったし、あまり笑わなくなった

放課後の寄り道も全然しない

かといって、あたしから寄り道しようとも言わなかったし、そもそもそんな気分になれなかったし

そんなこと思いながら歩く、いつもの帰り道

忠「……なぁA、ちょっと寄り道せえへん？」

電車を降りてから、たつが、近くにお店なんかなさそうな住宅街の真ん中で、そう話しかけてくれた

A「うん、いいよ？」

ふっと笑って歩いて行く、たつの後ろをついて行く

たつは、自販機でコーヒーとココアを買うと

忠「今日は、ちょっとぬくいな」

そう言いながら、あたしにココアをくれた

A「あ、ありがと」

そして、また歩き出すたつ

ついて行くと、少し広めの公園に着いた

背もたれのあるベンチにたつが座ったから、その隣にあたしも座った

目の前にはいくつか遊具があるけど、遊んでる子どもたちはいない

暖かいって言っても、1月の夕方だもんね

A「たつ、いただくね」

忠「おん」

ココアの蓋を開けて一口飲むと、たつもコーヒーを開ける

一口飲んでから、たつが話し始めた

忠「俺、Aが好きやで」

急にそんなこと言い出すから思わずたつを見ると、たつもあたしを見てた

A「うん。あたしも、たつのこと好きだよ？」

いつも一緒にいるんだもん

嫌いなわけない

忠「…………でもそれは、村上くんの好きとはちゃうねやろ？」

A「…………」

見たことのないたつの表情に、どうしたらいいかわからなくなってしまって目を逸らしかけたけど、たつは、それを許してはくれなかった

忠「俺は、子どもの時からずっとAのこと好きやったで。女の子として」

A「…………」

忠「Aが、村上くんを好きになるより、ずっと前からやねんで。知らんかったやろ」

A「………………ごめん」

……………知らなかったわけじゃない

なんとなくそんな気はしてた、けど

あたしと、たつと、隆ちゃんの間には恋愛感情なんて存在しないって、勝手に、そう思い込もうとしてたんだ