ハナミズキ3 (ページ19)

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すれ違いざま、パーカーの人と目が合う

………ほんとに一瞬だったけど

目が合った時、スローモーションがかかったみたいに

ゆっくりと時間が流れたように感じて

小柄なその人の顔が、はっきりと見てとれた

やっぱりこの人が、さっきのあの歌声の人なのかな……

睨まれたわけじゃないと思うけど………なんだかすごく、目力のある人だった

通り過ぎて行っただけなのに

ほんの一瞬、目が合っただけなのに

真っ赤なパーカーのその人は、圧倒的な存在感を残して

公園から出た突き当たりを、右の方へ曲がって行ってしまった

隆「………なんか、今の人さぁ………初めて会うた気がせえへんねん……なんでやろ………」

隆ちゃんが、不思議なことを言い出したけど

忠「…………俺も……なんか変な感じする」

たつも、なぜか隆ちゃんの言うことに賛同してた

パーカーのその人ことが、なんか気になってしまって

その人が歩いて行った後をたどってみた

公園を出てすぐ、右方向を見たけど

赤いパーカーはもうどこにも見えなくて

あの人が残していったはずの足跡も、すでに雪が隠してしまっていた

たつと隆ちゃんが、ゆっくり追い付いて来てくれて

忠「A、ほんまにもう帰ろ？雪、強なってきたし」

隆「明日から、ガッコ行くねやろ？ほな、ちょっとでも勉強したほうがええよ？」

…………………………………………ん？

A「…………勉強？あ、そっか。休んでる間に授業進んじゃってるよね……」

隆「…………や……まぁ、それもあんねんけど、な？」

隆ちゃんが、ちょっと困ったようにたつを見る

忠「横山くんと恵美が家行ったんやろ？そん時に教えてくれへんかったん？」

A「………？何を？」

2人が、あからさまに『あちゃぁ』って感じの顔をするから

A「……え、何？なんか悪いこと？」

隆「…………Aちゃんなら、大丈夫と思うねんけどな……？明日、市内の一斉模試があんねん。せやから俺、部活休みで、今ここおんねんで？」

A「……………………………………嘘」

忠「いや、ほんまやで？せやからA、なんでまた明日なん？て思てん」

隆「まぁそら、受けへんよりは受けた方がええねんから、ね？」

A「…………」

複雑な気分になりながらも、3人で家に帰る

A「はぁ…………切り替えよ…」

できるだけの勉強はしとこうって、無理やり、気持ちを落ち着かせた