ハナミズキ3 (ページ13)

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村上先生が行ってしまって、たつと2人でベンチの前に取り残される

時間が、どのくらい流れたのかもわからない

………人間て

心が動かなくなるくらいのショックを受けると

涙なんて出て来ない生き物らしい

……………それとも、あたしだけに限ったことなんだろうか

でも、もう

そんなことどうでもよかった

全てのことがどうでもよくなっていた

たつに手を引かれて、なんとか家まで帰ったけど

心は、穴が開いたままで固まってしまっていた

それから、あたしは

心だけじゃなくて

身体も動かなくなって

次の日から学校にも行かなくなった

だって

もう意味なんかないもん

村上先生が拓いてくれたからこそ、無くしちゃいけないと思って頑張ってた学校生活

だけど、もう

何をどう頑張ったらいいのかわからない

お母さんが心配してるのもわかってる

スマホがひっきりなしに通知を知らせてるのもわかってる

毎日必ず誰かが家に来てくれてるみたいだったけど

誰が来たのかなんて気にもならなかった

食事？……………なにそれ

どうやって、生活ってしてたんだっけ………？

あの公園で村上先生にあったあの日から

今日で何日経ったんだろう

その感覚すらもぼんやりしてきた頃

あたしに会いに家に来たその人たちは

…………お母さんの許可は、もちろんあったと思うんだけど

今、あたしの部屋の前にいて

静かにドアをノックしてる

「A………出て来てくれへんか。顔見してくれるだけでええねん」

「Aお願い……顔見せて…？もう、あたしも限界なんだよ……」

女の子の方は、泣いてるみたいだった

…………ごめん

あたしが泣かせちゃってるんだね

そう、思ったら

何の迷いもなく

あたしは、部屋のドアノブに手をかけた

………細く開けたドアの隙間の向こう

ほっとしたような、横山先生と

「A………！」

ぼろぼろと涙を流してる恵美がいて

A「…………ぇ、み…」

恵美は、ドアを大きく開けて

ゆっくり、あたしに抱きついて泣いた

………あんなに気の強い恵美が、身体を震わせて泣いている

恵「Aのばか………！」

口とは裏腹に、目一杯の力で抱きしめてくれる

懐かしく感じるほどの恵美の香りに安心して、あたしも恵美の背中に手を回したら

A「…………」

…………恵美の身体が

以前より細くなってることに気がついた