二兎追うものは一兎も得ず【 灰谷兄弟 】

二十八話 ページ35

　
　
　
「 はぁッ、はぁ…………ッ、はぁぁぁ"……… 」




「 ッ、……けほッ"、ッはぁ

　
　……りん、どうくんッ、はぁ、…速、ッすぎ 」




とある公園のコンクリートマウンテン内




雨が降っているせいか午前中にも関わらず周りが薄暗い




猛スピードで走ったせいか足はもう動かない




へたり、と腰が崩れ、みっともない姿を見せてしまう




「 …………おねーさんが、アイツらに


　ッ、…………喧嘩売るからだろ 」




胡座をかき、雨で濡れた髪を掻き分ける竜胆くんは私に言い放った




まるで、私のせいだと




「 だ、だって！ 喧嘩は、絶対に見過ごせない…から 」




前髪から水滴が何度も垂れ続ける




聞こえるのは雨の打ち付ける音と竜胆くんの呼吸音、そして私の心臓の音




「 ──── ごめん 」




ふと聞こえた小さな声




私は竜胆くんの方へ視線を送ると、俯いたまま頭を掻いていた




「 あの時、俺らおねーさんの事考えずに


　溜まってた欲をぶつけていた。


　別に腹いせとか、復讐とか。


　そんなつもりでやった訳じゃねぇ 」




竜胆くんは私の顔を見上げ、真剣な眼差しで言い放った




「 ……え、あ、……んじゃ、何で 」




「 ………ッ


　あの後、俺と兄貴はちゃんと反省したよ


　"おねーさんに謝ろう"って 」




「 ……その、蘭くんは今何処に居るんですか？ 」




ふと私はいつも近くに居る蘭くんの行方を聞くと、竜胆くんは複雑な表情を取った




私は竜胆くんの名前を呼び、同じ質問を返した




「 兄貴は、…今は居ねぇ 」




「 何で、ですか 」




「 知らねぇよ…ッ 俺は兄貴の考えてる事なんて


　読み取れるわけでもねぇしッ……！ 」




いきなりの強めの発言に私は肩を揺らす




何で、蘭くんは此処に居ない？




どうして、竜胆くんはリンチにあっていた？




　






　


「 ………兄貴は、"あの後"





　急に姿を消したんだよ 」




竜胆くんのその一言に、また1つ、ドクンッと心臓が高く鳴った。

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