二兎追うものは一兎も得ず【 灰谷兄弟 】

十八話 ページ24

　
　
　
「 はぁ、はぁっ、はぁ…………っ 」




数時間前。突然の木下さんからの電話に私は目を疑った




流されるがままに内容を聞いていると、思わず口元を押さえていた。




──────── "乱闘事件"の応援




しかし異常なほど息切れの激しい彼の呼吸音




まるで"あの時"の様で放っておけなかった




5年も月日は経っているが繊細に覚えている




ギュッ、と拳を握り締めては"とある目的地"まで足を動かした




─────────────────────────









「 ………………あれ？ 」




目的地である廃車場




その真ん中では警官に押さえ付けられている青年と救急車に運ばれる青年が1人ずつ居た




木下さんは"乱闘"と言っていた




なのに目の前には青年2人しか居ない




……もしかして、2人以外全員逃げたということ？




「 上條ちゃん！ 」




「 …！木下さん！


　あのッ、乱闘事件って聞いて……ッ 」




「 その事だけど、…見ての通りだ。


　駆け付けた時には2人しか居なかった 」




リン、と鈴の音が聞こえた。




特徴的な髪色の青年はパトカーに乗せられていく




もう1人の青年は意識の無い状態に見えた




逮捕者1名に重傷者1名……？




2人だけの喧嘩ならこんな廃車場を選ぶ訳が無い




「 …………ッ、ちょっとすみません！！ 」




「 え、ッ上條ちゃん…………！？ 」




私は木下さんに謝罪しては廃車場から抜け出した




まだ、まだこの辺りに居るはずだ




「( ……2人だけじゃない！！2人だけの喧嘩なら


　重傷者が出る確率は低い…ッ！ )」




逃げ場に適した路地裏に足を運び、辺りを見渡す




廃車場に散らばっていた無数の血痕




本当に、"あの時"と類似してるじゃないか




私は路地裏の曲がり角へ行き先を変えた時





──── 一瞬、目の前が急に真っ白になった。







　


「 ッ！！ 」




「 ッうわ 」




硬い何かにぶつかる感触




ふわりと香った特徴的な匂い




僅かに血の匂いがし、思わず顔を上げてしまう




黒髪の三つ編みと毛先の部分が金色をした髪型の青年




「 ………いってぇ…って


　……あれ、あれれ？ あれれれれ〜〜？


　どっかで見た事あんなぁ、お前 」




「 兄貴、早くしねぇとサツが………、って 」




その隣を金色と水色っぽい髪色をした丸眼鏡の青年が立つ




2人が揃って私を見下ろす様子に、何故か私は嫌な記憶を思い出してしまった。

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