第十二節 戒め ページ14
彼女は銃剣を強く握り、剣を外し、銃口を寧々に向けた。
固唾を呑む音が僅かに聞こえた。
「そう……最期に言い残す事は」
「先輩!そんなのだめです!俺が代わりに」
「良いの光くん、私の所為でこんなことになったし」
「そんな事ないっす!」
「ヤシロ……」
「それに、花子くんの言う通り悪い人じゃない気がする、だから」
「七番様の事大好きですもんね」
「そっ、そういう事じゃ!」
「でも、そういう事は鵜呑みにしないほうが宜しいかと。私は善人でも悪人でもないです。ただ神に仕える者、それだけです。貴女のその浅はかで軽佻軽薄な考え、戒めてあげましょう。来世か地獄で悔い改めなさい」
彼女の指が引き金を引いた。
「ヤシロ!」
「先輩!」
二人が駆け出した時には遅かった。
乾いた音が響く。
「……えっ」
寧々は瞑った目をゆっくり開けた。
「いきてる……?」
銃口からは煙が僅かに昇る。
音もした。
然し、寧々は一つの掠り傷も負わず、辺りには弾の一つも落ちていなかった。
「ヤシロ!」
「先輩!良かった〜」
彼らは強く抱きあった。
「悪い人じゃないって言ったでしょ?」
寧々は満面の笑みでAに「ねっ」と言った。
Aは目を少し見開いて、そっぽをむいてしまった。
彼女の銃には最初から弾は入っていなかった。
そして彼女は撃つとき、寧々を避けて撃っていたのだ。
寧々はAの前に出て、彼女の手を握った。
「今日は帰ります!何だか無理やり奪うのは違うかなって思うので……でも、私たちに協力してくれませんか?」
「え」
「ちょっ、ヤシロ何を急に」
「Aさん、すっごく強いじゃないですか!ですから、私たちに力を貸して下さい!」
Aはいきなりの事で戸惑った。
少しだけ微笑んで、
「私も、やり残したことあるので、力になれれば、ですが……」
三人はぱあっと明るくなり、それぞれ喜んだ。
「よろしくね、Aちゃん!」
Aちゃん、そう呼ばれて照れくさくなった彼女は袖で口元を隠し、軽く礼をした。
依代を返して貰うはずが新たに仲間を増やしてしまった。
だが、きっとそれでいいのだろう。
双方にとっての、一番の善策だ。
_________
_______
書生服の少年、つかさが鼻歌を歌いながら校舎の廊下を歩いていた。
「懺悔かあ……何を悔めば良いかな、結構イイ子にはしてる筈だけど」
傍らにいたもっけの耳を掴んで呟いた。
「ねえ、何を悔めばいい?
あまね」
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アリてる.冷花(プロフ) - 迷い猫さん» コメントありがとうございます。嬉しいです!近頃トプ画を変える予定です。 (2021年9月29日 11時) (レス) id: 39e2327944 (このIDを非表示/違反報告)
迷い猫 - 絵うま!!絵うま!!絵うま!!絵う(((殴ハイスミマセン…… (2021年9月26日 17時) (レス) id: 639c61a784 (このIDを非表示/違反報告)
からす - 更新してない!(;° ロ°) (2021年8月30日 18時) (レス) id: b1895113ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アリてる.冷花 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/wuashyt8942
作成日時:2020年8月21日 23時