【wt】占い師始めます。 (ページ1)

今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:123 hit

Prologue ページ1

ひたり、ひたり

暫くの沈黙が訪れる。聞こえるのは、水音だけ。

ゆっくりと目を開けて眼前に広がるのは黒色の防弾チョッキ。
しっかりと見ずとも防弾チョッキは所々切れたり汚れたりしていて、全身ボロボロなことが分かる。

なんだまだこんな所に居るのか。
こんな世界早くおさらばしたいところだ。

もう一度ガラス片を喉元へ突き刺そうとした時、あんなにも強く握りしめていたものが、手に無いことに気づいた。

「何お前。死.にたいの。」

特徴的な低い声だ。

もう一度目を開けてしっかりと目の前の男性を見ると、その人は血塗れのガラス片と腰の高さほどの剣を持っている。剣からは赤黒い液体が滴り落ち、普段は嗅がないその鉄の異臭に吐き気が込み上げてくる。

「無視すんの？」

赤いインカムを耳に当て、三白眼で目の下に酷い隈がある。

ガラス片を後ろへ放り投げ、私の前髪を掴んで無理やり立たせる。髪が地肌から抜ける音が骨を伝って脳に響く。

「私、……を、殺して」

「はァ？」

呆れたようにため息をこぼした。
懇願するように瞼を開き見つめる。

「ッお前、その目……！」

頷く間もなく、私の意識はぷつりと切れた。