【WT】少女【kn】 (ページ9)

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「そういえば、名前聞いてもいい？」

「･･････AAです」

「Aさんね、よろしく。多分同い年くらいだし、敬語使わなくていいよ」

「わ、かりました･･･じゃなくて、えっと、わかった」

　あらためて、きんときくんはとても綺麗な顔をした人だと思った。目線をあげると、さっきよりも顔色がよく見える。サラサラとした黒髪は手入れが行き届いていて、爽やかだ。なんというか、女の子に人気がありそうな人だ。

あんまりじろじろ眺めたつもりはなかったけれど、きんときくんは私の視線に気が付いたらしく、うっかり目があってしまって驚いた。向こうも目を見開いてわたしとおんなじような顔をしていた。

どんな顔をしたらいいのか分からなくて慌ててきんときくんから目線を逸らしたはいいけれど、何となく居心地が悪くなってしまった私は、とにかくなにか言おうと色々考える。
きんときくんにさっきはどうして俯いてたの、とかなんで一緒に絵を見て回ろうと思ったの、とか聞きたいことが沢山あるけれど、口にするのはどうしても憚られた。

初対面だというのもあるけど、私を見つめて人の良さそうな笑みを浮かべる彼は、さっきのソファで俯いていた男の人とは別人みたいで、何も言えなかったというのが正しい。

きんときくんは姿勢が良かった。背筋が、天井から垂らした糸に引っ張られているように伸びていた。顎を僅かに引いていた。

最初に私が彼に抱いていた印象は、どちらかというともっと物憂げなイメージだったけれど、その綺麗な立ち姿を見るとどちらが彼の本来の姿なのか分からなくて、ただただ困惑してしまった。

彼も絵を描くと言っていたけど、どんな絵を描くのだろう。それくらいは聞いてもいいだろうか。