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「・・・・・・ごめん。人違いしてた」
「あ、いえ、すみませんこちらこそ」
「・・・・・・君も作品を出したの?」
「いえ、その、見に来ただけです、友人の絵を」
「・・・・・・そう」
同い年くらいだろうか。こっそりと彼の姿を視界に入れる。顔色はあまり良くはないが、話し方や表情から柔らかい雰囲気を感じる。温厚そうな人だ。そしてすごく綺麗な顔をしてる。
知らない人物から食べ物をもらってはいけないと教わらなかったのか、彼は私の手から受け取った飴の封を切ると躊躇いもなく口に入れる。「・・・・・・甘い」当たり前のことを言うので、つい笑ってしまった。
「一人で来たの?」
「はい」
私といくらか会話をしても人違いに気が付かなかったくらいだ。きっと彼の方は女の人と一緒だったんだろう。
ならば私はさっさと立ち上がって絵を見に行った方がいい。そう思っているのに、彼はなかなか話をやめようとはしない。
「君の友人は、どんな絵を描くの?油彩?水彩?それとも水墨?」
「え?えーと水彩?ですかね?」
「水彩か・・・・・・俺は滅多に使わないんだよね。これから見に行くの?それとも・・・・・・」
「あ、これからです」
これで解放してもらえるだろうか。そう思ったのも束の間、彼は何か考え込む素振りを見せたあと、「一緒に行ってもいい?」と口にする。
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作者名:やなぎ | 作成日時:2024年1月18日 11時