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「恐怖だろうと感動だろうと、人に感情を与える絵っていうのは、それだけですごいんじゃないかな」
咄嗟に手を伸ばす。俺が隠していた札が見えてしまうけれど、構わない。彼女がまとめていた髪の毛を勝手にほどく。「えっ!?」短い悲鳴をあげられた。
色素の薄い柔らかな髪の毛がはらりと肩におちていく。
「な、なにす」
「動かないで、そのままあの一点を見ていて」
低い声に彼女がびくりと体を揺らす。言われるがままに彼女は俺の絵の額縁を見上げていた。
思わず手でフレームを作る。彼女の横顔が作り上げる輪郭の、女性らしい丸みを帯びたラインや、柔らかそうな耳朶を、俺は知っていた。
「『少女』」
「はい!?」
有無を言わさずその手首を掴む。驚くほど華奢なそれは、酷く熱かった。順路を抜けて、彼女を連れていく。俺の向かうその先に、その絵はある。
凡庸で、色使いも構図もどこかで見たことがあるくらいに使い古されていて、だけどどうしても目を引いたあの少女の絵。
俺の作品と違って、その前には人が足を止めていた。俺に手をひかれていた彼女が「あ」と短く声をあげる。
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作者名:やなぎ | 作成日時:2024年1月18日 11時