【ﾜｰﾄﾘ】好きだ (ページ4)

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4話ページ4

「恋ねえ」
腕を振り上げ、夜の街に丸い光を次々と放っていく。楕円状に形を変えた白色が瞬く間に硬い装甲を打ち砕くと、バムスターが一体、また一体と加古の前に砕かれて煙を上げた。

「それで、会って話したの？」
「ううん、言葉に詰まって話せなかった。風間さんは隊員に話しかけられて行っちゃうし、結局何も言わずに別れちゃった」
「あらー、そういうAも悪くないわ」

鋭い閃光が加古とAの背後を走る。A級最年少隊員、黒江双葉はそわそわと2人に目を配りながらも、その手は着実に任務を遂行していく。

「わかるわ。あなたって、人の懐に入るのを怖がるところがあるもの。でも、時々思い切って近づこうとするのよね。可愛いところよ」
「そうなのかな」
「実はここへ来るまえ風間さんに会ったの。Aが遠征帰りで疲れてるだろうから、気にしてやれと言われたわ」
「嘘……！」

Aは途端に頬を赤らめた。加古望の言葉は水のように耳に溶け込んでくる。

「風間さんなら気付いているわよ。あなたが隊を組まないのも、上手く人に甘えられない理由も、きっとね」

加古の表情は笑みを浮かべたまま変わらない。サイレンの音は止み、いつの間にかしんとした夜が戻ってきている。

「加古さん、Aさん、終わり」
「ご苦労ね双葉」
「ありがとう、双葉ちゃん。2人とも、本部に戻る？」
「双葉を送って帰るわ。夜が長引いたから説明をしないとね」
「そっか。お疲れさま。加古ちゃん、また大学でね」
「ええ」

◇

「……Aさんって、何で隊を組まないんですか？組めない事情があるんですか？」
黒いパーカーに身を包んだ黒江は、Aを見送ったあとにぽつりと呟いた。外気に触れた鼻先は少しだけ赤くなっている。

「ちゃんと強いんだし、何か勿体ない気がします」
「昔は組んでいたのよ。私が知る限り2回はね」

◇

「風間さん、遅くまでお疲れさまです」
Aは忘れ物ついでに訪れたA級部隊ブースで、１人書類整理をしていた風間に話しかける。

こちらの声が届かなかったのか、てきぱきと手元を片す風間は無反応だ。
「風間さん？もしもし？」
不思議そうに顔の前に手を出すと、勢いよく手首を掴まれて思わず肩が跳ねる。

ゆっくりと、風間の目がこちらを向いた。