【ﾜｰﾄﾘ】好きだ (ページ15)

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15話ページ15

「先輩！」
「んー？」
「遠征部隊が帰還しました」
「マジ？やっとか！」

米屋はガバリと起き上がり、駆け込んできた古寺と共に地下へと急いだ。
遠征部隊が帰還予定の日程を過ぎてから約5日。
日ごとに増す緊迫感がようやく解放される瞬間であった。

予定を知っていたのは幹部会議に出たＡ級のみ。三輪隊もその一部だ。
「弾バカ！ようやく帰ってきたな」
「おー槍バカ。お前、今日防衛任務なんだ？」
ぱんと手を合わせる。
表情にはいつもの余裕さがうかがえるが、手は熱っぽく、上手く力が入っていないようだった。

「……大丈夫か？」
「まーな」
出水はくつと笑って見せる。

「出水ー！艇のトリガー頼んだぞ」
「はい！」

遠征艇の中から太刀川が現れる。彼は隊服姿のままだ。
くたりと身体を倒したAが抱きかかえられている。

「……おいおい、Aさんどうしたんだよ？艇でも襲撃されたってか？」
「人型近界人が襲ってきやがったんだ。
おれらが前線から退いてきたときには既に片付いてて、よく分からないけどAさんもあの状態でさ。
冬島さんの提案で１日待ってみたけど、目が覚めねーんだわ」

太刀川はAを医務室へ運ぶため、まっすぐエレベーターを目指した。冬島と一言二言会話をして、到着したエレベーターに乗り込んでいく。

「本部長には俺から言っておくから、Aちゃんを預けたら上がってきてくれ」
「了解(りょーかい)」
「はい。お疲れさん」

扉が閉まる。こういう時、うちの隊長はなんだかんだ隊長らしいことするんだよなと出水は思った。
任務の集合時間が近いことを古寺が告げると、彼らは荷物を持って地下を後にした。

「……大丈夫でしょうか」
「な。三輪隊(おれら)はAさんとあまり接点がないからさ。あんなAさん自体初めて見たわけだし」
「俺もだよ。多分、近界人と何かあったんじゃねーかなって。後で太刀川さんに聞いてみようかな」

そう言いながらも、ある程度憶測は立っているつもりだった。
目立った外傷はなく、呼吸が整っているにもかかわらず意識が戻らないのは、強いストレスによるものとみて間違いない。

例えば、彼女に人を斬れない事情があったとして、人型近界人との接触により、やむを得ず殺してしまった──まあ分からなくもないといったところか。

「どーした？出水」
「いや、何でもない」
いやいや。
あの人、結構個人戦するんだよなー。
分かんねー。