【ﾜｰﾄﾘ】好きだ (ページ13)

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13話ページ13

◇

静かな夜の街に、堅い装甲を持った怪物がさまよう。
建物の線がぐにゃりと歪み、次から次へとあり得ない大きさの怪物─ボーダーではバムスターと呼ばれている─が、人々のトリオンを求めて現れていく。

「はあー多いなあ。嫌になっちゃうよ」

もう何体狩り取ったか分からないよと、ステルスを解きながら菊地原は気だるそうに呟く。

「疲れたか」
風間が問う。
「いやそんなんじゃないですけど。こいつら弱いし」

「そういえば、風間さん。今回の遠征組はまた太刀川隊が入ったそうですね」
「ああ」
「ああー遠征……あの人もいつも入るよね」

◇

「太刀川さんは分かるっすよ。強いですもん。でもA先輩は何であんなに引っ張りだこなんですかね」

佐鳥は書類作業に飽きたらしく、射撃用のトリガーをくるくると回しはじめた。

「Aさんはトリオンが多いから、遠征には欠かせないんだよ」

「だったら玉狛の雨取さんが一番トリオン多いのにな。二宮隊長も捨てがたい」

「二宮さんは違うと思います。戦闘面でのトリオン消費が激しい人が、艇の動力源のためにトリオンをつぎ込むのは勿体ないかと」

「木虎」

「う～ん、じゃあ加古先輩も同じようなもんじゃん。隊長で射手だし」

「佐鳥先輩は仕事してください」

木虎に切り捨てられた佐鳥が、ぐぬうと頭を垂れてソファーへ沈んでいく。

「嵐山さあん……」
「ははは。疲れていると思うが、あと少しだ。頑張ろう」

◇

「このまえ、Aせんぱいと5本勝負したよ」

「は!? ウソでしょ！何で遊真が!?」

「頼みこんだら1回だけゆるされた」

ずるいずるいと空閑を叩く小南とは反対に、三雲は「すごいな……」と声を漏らす。

「Ａ級の先輩たちと競り合うなんて、流石だな」
「うん。私たちも頑張らないとね」

「で、結果はどうよ」

小南の問いに対し、空閑は指をにゅっと2本立てて「2本取った」と報告した。

「2本……！」
「すごいね、遊真くん」
「私が教えたおかげよ。

あんたみたいな接近タイプにAさんは難しいでしょ」

「かげうら先輩に比べると戦闘の型は普通だったけど、A先輩はカウンターがきつい」

「Aさんは射撃で攻めなきゃダメなの。追い込めば追い込むほど強くなるんだから」

「ふむ……心得た」