先生じゃない

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あ、今日の校門渡辺先生だ。
手に持ってたスマホで前髪チェックして。
ん、割れてない、大丈夫。
イヤホンしまいながら、おはようございますと颯爽と声をかけようと思ったのに。

「なあんで置いてくんよお！」

『お』の口で固まった唇。
後ろからぽんっと肩を叩かれた。

「…おはよ、康二」

「起こしてくれてもよくない？お隣さんなんやからさあ！」

あ、今日の校門しょっぴーやん！って同じように前髪直してるのは幼なじみでお隣に住んでる向井康二。
関西から引っ越してきたのは康二が4歳の時だったかな。
それからずっと幼小中ときて、今の高校も同じという腐れ縁っぷり。
明るいし面白いし、ちょっと気にしいだけど、子犬みたいで可愛いくて憎めないやつ。
ことある事にAちゃん、Aちゃん！って後ついて回ってたのに気付いたら背も抜かされて、最近は髪も染めておしゃれになってしまった。

「しょっぴおあよー」

「康二、ネクタイと挨拶くらいちゃんとしろ。あと、俺お前の先生な」

「えー！ええやないっすかぁ。俺らの仲でしょ！」

「なんもねえから。気持ち悪いこと言うな」

「渡辺先生おはようございます」

「おー…待って、当てるわ。えーっとな…康二の幼なじみで、田中！田中A！」

「惜しいです、中田です」

「あっはっ！田中とか言っちゃった！やば！」

康二の幼なじみとしてでも、名前間違えられててもいい。
この大きな口開けて笑う渡辺先生が見れるなら。
私ってばめっちゃ健気。

「Aは、制服もスクバもちゃんとしてるな。あ、でもスカートは膝下」

「ちょ、Aの脚見たらだめっすよ！それになんで名前で呼んでんすか！」

「えー、いつも間違えるから。でも名前だと間違えないし」

ずっる！この先生ずるい！

「しょおた〜こっち終わったよーん。門しめるけど」

「はいはい。お願い。あと、ここ学校な」

佐久間先生がひょこひょこやってきて。
お前らも早く行けよーと促されて校内へ。

「今日もかっこよかったなあ、しょっぴ！」

「さっき怒られてたじゃん。もう、ネクタイ！」

「なあんか、上手く結べへんのよなあ。中学ん時みたいにぱっちんやったらええのに」

「あれださい。今のがかっこいいよ、康二」

「え、そんな！Aがかっこいいって…赤飯炊かな…」

「なんでやねん！」

「今日も仲良いねえ、おふたりさん！」

「夫婦漫才かよ」

目の前から現れたのは一学年下の目黒とラウールの長身コンビ。




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