花好きな美人さん ページ14
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次の日。図書当番でない今日は天気が良いので外で本を読む事にした。中庭に花壇とベンチがあり、木陰になりやすいのでゆっくり過ごすには最適だ。
「あ…」
ふと、花壇に咲いている花に目がいった。4月にもここで本を読んだ事があるが、その時は桜ばかり見ていたので花壇は殆ど見ていない。こんなにも綺麗な花が咲いていたのか。知らなかった。
「可愛い花…。」
「その花はカスミソウっていうんだ。」
「…!」
後ろから声が聞こえ振り向くと、青髪で優しそうな顔立ちの男子がじょうろを持って立っていた。驚く私に構わず、彼は微笑みながら花壇に近付く。
「ごめんね、突然声かけちゃって。」
「いえ…」
「その花を可愛いって言ってるのが聞こえたから、つい教えたくなったんだ。」
「はぁ…」
「君はどうしてここに?」
「気が向いたから。」
「…あははっ、そうだったんだ。そっか、気が向いたからか。」
今日ここに来るのはやめた方が良かったか。すっかり美人さんの話し相手になる羽目になってしまった。何が面白かったのか全然わからない。
「花は好きかい?」
「好きか嫌いかなら好きです。」
「俺も好きなんだ。ここの花壇の花はみんな俺が世話してる。」
「委員会の仕事か何か?」
「んー、俺が個人的に世話したいって先生に言ったんだ。ガーデニングが趣味でね。」
花に水をやりながら、彼は話しかけ続ける。正直静かに本を読みたいが、今更この場を離れるのも不自然。手に持ってる本はずっと同じページを開いたままだ。
「その本は?」
「…小説。」
「どんな話?」
これは花を巡って起こる"裏切り"をテーマにした小説だ。花がキーワードだからという単純な理由でここに来たのもある。ニコニコ微笑みながら私の返答を待ってるので、あまり待たせるのが申し訳ない気持ちになった。
「…ある国の王妃が珍しい花を手に入れて、貴婦人達とその花を巡ってドタバタする話。」
「あははっ、ドタバタするんだ。それってもしかして、ダリアの花言葉の由来の話じゃない?」
「詳しい事はわからないけど…、その珍しい花はダリアって書いてある。」
「やっぱりそうだ。君とは話が合いそうだな。」
「私はそんな事思わないけど…」
「酷いなぁ。」
ふと近くの教室の時計を見てみると、あと5分程で昼休みが終わる。長居しすぎてしまった。
「では、私はこれで。」
「うん。またいつでもおいで。」
「気が向けば。」
(彼の横を通った時)
(仄かに花の香りがした)
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otohsun08050054(プロフ) - ヤバい!めちゃくちゃ面白いのですが!もっと早くこの作品に出逢いたかった(>_<) (2020年7月28日 9時) (レス) id: 736f999e12 (このIDを非表示/違反報告)
渡邊(プロフ) - もんたろさん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉をいただき感激です…!不定期更新ではありますが、完結までお付き合いいただけると幸いです(´ー`*) (2017年12月2日 0時) (レス) id: 2443de6131 (このIDを非表示/違反報告)
もんたろ(プロフ) - テニス部の私生活?って言うんでしょうか…それがなんだか自然体って感じですごく好きです。登場人物達の雰囲気が皆やわらかくて読んでいてほっこりします。更新頑張ってください! (2017年12月1日 23時) (レス) id: 47cdc4e065 (このIDを非表示/違反報告)
渡邊(プロフ) - 和堂 桜さん» コメントありがとうごさいます!1つの話で詰め込みたい内容が多すぎて今みたいな感じになっております…。アドバイスいただいた内容を参考にしながら徐々に改善していこうと思います!ご指摘ありがとうございました(´ー`*) (2017年11月26日 1時) (レス) id: 2443de6131 (このIDを非表示/違反報告)
和堂 桜(プロフ) - 内容は魅力的なんですが・・最初の方から、「」以外の説明?みたいなところが文字がつながりすぎて読みにくいです・・。改行?とか空白を多くすると読みやすくなるかと・・すみません!!もったいないなーと思いまして!! (2017年11月25日 20時) (レス) id: 5cbf3e7e7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渡邊 | 作成日時:2017年10月6日 18時