【庭球】平穏に過ごしたいだけ

タイトル回収 ページ50

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「･･････」


図書当番ではない今日は、当番の日以外の定位置になりつつある窓側の奥のテーブルで先日買った本を読んでいた･･･つもりだった。

きっと間もなく柳が来る筈。特に約束はしてないし、何なら図書室に来るのを止める事だって出来た。本人も昨日の質問の回答を急いでいる訳でもなかった。でも、なんとなく今朝の私の様子を見て彼は何かを察したような気がした。手元の本を読み進めているが、内容が全く頭に入ってこない。


「八神」
「･･･柳、」


ほら、来た。彼は昨日借りた本を持ち、私の向かい側に座った。無断で座った事は特に気にしていない。ただ、どう話を切り出してくるのか、態度には出していないが内心かなり気にしている。


「･･････」
「･･････」


空気が、重い。お互い本を読み進めており、ページをめくる音だけが響いた。もしかしたら、純粋に本を読みに来ただけなのかもしれない。ここに座ったのは、たまたま顔見知りの私がいたからなのかもしれない。変に探りすぎだったか。手元の本を読み終わったが、変に空気を気にしてしまい、席を離れるタイミングを失ってしまった。面白かった章に戻り、ゆっくりと読み進める。なんで私がこんなに空気を気にしなければいけないんだ、段々腹が立ってきた。何これ、あんなに悩んで昨日は逃げたけど、もう早くすっきりしたい。凄く自分勝手だな私って。


「･･･ねぇ、」
「八神、」
「「あ･･･」」


私が声を掛けたタイミングで柳の言葉と被った。まるで少女漫画みたいな展開に不可抗力で思い切り顔を顰めてしまった。私の顔を見た柳が右手で口許を隠した。小刻みに身体が震えているので、どう見ても笑いを堪えてるようにしか見えない。


「ちょっと･･･」
「あぁ、すまないな･･･っ」
「笑いが隠しきれてないんだけど」
「気にするな。さて･･･どちらから話す？」
「･･･じゃあ柳から」


と言っても私が答える側に変わりないから、どちらから話しても結果は変わらない。


「あぁ。･･･答えは出たようだな」
「やっぱりその話題だよね」
「この流れでそれ以外の話題はないだろう？」
「ですよね−」
「昨日と同様、単刀直入に聞く。･･･昨日の答えを貰いたい」


変に探られながら聞かれるよりずっとましだ。散々悩んだけど、正直逃げたいけど、答える事すらめんどくさいとも思っちゃうけど、私の気持ちは変わらない。


「私はね、ただ･･･」




(平穏に過ごしたいだけ)

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