【庭球】平穏に過ごしたいだけ

矛盾 ページ46

_

昼休みが終わり、その後の授業はいつも以上に頭に入らなかった。頭の中は柳への回答の事でいっぱいになっており、義務教育を受けてる身として図々しいが授業どころじゃない。

そんな状態で1日が終わり、後ろから柳に「また明日」と言われ思わず振り向いたが、既に彼は真田の席へと向かっていた。それが彼なりの気遣いだとわかるからこそ、心が痛んだ。自業自得なのは理解している。


「Aちゃん、今日ずっと元気ないね？大丈夫？」
「村木さん…。うん、平気」
「ならいいんだけど…。何かあったら相談にのるからね。友達なんだから！」


部活に向かう前に私の元に来た村木さん。彼女にも伝わってしまう程考え込んでいたのか。私は気持ちを隠すのが上手いと思っていたが、そうでもないようだ。いつも笑顔の彼女も心配そうな顔を向けており、それを見て私は苦笑を浮かべる事しか出来なかった。



＊


「はーっ、良い湯だった」


帰宅後、いつもどおり夕飯と入浴を済ませ、あとは寝るだけの状態。眠くなるまでベッドでごろごろしながら携帯を弄る。今日はあまり本を読む気分になれなかったので、このまま寝落ちを試みるつもりだ。


「……」


『あんたはそうやって人と距離を置きすぎや。向こうから友達になってくれる言うたんやろ？なら甘えればええんや』

『何かあったら相談にのるからね。友達なんだから！』

『ただ単に、俺がそう信じたいのだろう』


「……はぁ、」


いろんな人の言葉が頭に浮かび、考えがまとまらない。こんなにも自分が矛盾だらけの人間だとは思わなかった。


「(矛盾…？)」


何故矛盾してると思ったのだろう。平穏な日々を求めているのは本当。その為に人気者のテニス部と関わると平穏に過ごせない可能性があるから関わりたくないのも本当。それがたまたま彼等で、その中でも近場の人間が柳だっただけ。なら今後は関わらなければいい。これで答えは出ている。

だが、もし彼等がテニス部ではなかったら、 関わりたかったのか？あのままテニス部だという事を知らないままでいたのなら、関わり続けたかったのか？


「(…疲れた)」


そろそろ考えるのが面倒になってきた。ベッドの上をごろごろと何度も体勢を変え、落ち着く体勢を探す。すると、


♪〜♪〜


「ん？メール…」


充電器に挿して手放していた携帯が鳴り、また手元に持ってくる。メール画面を開いて送り主の名前を確認する。以前から度々メールをくれる人だった。


(件名:こんばんわん♡)

意外な相談相手→←予感

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す