安心する風 ページ8
*
あの後、私も風呂から出てタオルで無造作に髪を拭きながらリビングに行くと、ソファの先程と同じ位置にちょこんと座っているメア君がいた。(その隣にあの人形もいる)彼意外に順応性高いんじゃ…。そんな事を考えながら彼のそばに行くと、まだ髪が濡れていたのが窺えた。
「そのままだと風邪ひくよ?」
「これくらいで風邪なんてひかない。」
「こっちおいで、乾かすよ。」
「タオルで拭くだけだろ?自分でやる…。」
「ドライヤーで乾かすの。」
「どらいやー…?」
「ん?ドライヤー知らないのか?」
おいで、と手招きするとメア君は素直について来た。ドライヤーが気になるだけだと思うが、素直について来てくれた事が少し嬉しくなり、メア君にバレないように口元を緩ませた。こんな顔を見たらきっとまた鬱陶しげな顔をされるのは予想できる。
「これがドライヤー。主に髪を乾かすための機械。説明するより体験した方が早いから、そこの椅子に座って。」
「…。」
座ったのを確認してからドライヤーをセットし電源スイッチを押すと、あまりの音に彼は小さく声をあげて驚いた。まぁ初めて見る人からするとこんな小さな機械からこんな音がするなんて予想出来ないだろう。風をメア君の髪の毛に当て乾かしていくと、彼もこの音に慣れたのか肩の力が抜けてきた気がした。そのタイミングを見計らって話しかけてみる。
「で、こんな感じで髪を乾かしていく。気持ち良いだろ?」
「んー…、悪くない…。」
「なら良かった。これ人にやってもらってると気持ち良くて眠くなってくるんだよね。」
「ん…。」
「(おや、言った側からこの子は…)」
こくりこくりと動く頭、目の前の鏡を見ると瞼も重そうにしている。彼の紫の髪は全体的な長さは肩につかないぐらいだが、いかんせん長い前髪と髪の多さのせいで乾かすのに時間がかかる。大体は乾いたから後は自然乾燥、といった手もあるが、触ってみたりよく見てみると綺麗な髪をしているのでそれは気が引ける。
「(乾かし終わっても起きなかったら抱えて連れてくかな…)」
「……い」
「ん?なんか言った?」
「……」
ドライヤーの音で彼の呟いた言葉は何も聞こえず、電源を切って聞き返しても既に彼は睡魔に負けていた。気にはなるが眠ってしまっては仕方ない。歯磨きをさせようにも予備の歯ブラシもないし、明日買い忘れないようにしなければ。あどけない顔で寝ている彼を抱えて自室へと向かった。
(…あったかい)
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渡邊(プロフ) - 黒狐コハクさん» コメント返信遅くなってしまい申し訳ありませんでした…!応援ありがとうございます!ネタが尽きたらリクエスト募集も考えてますのでお気軽にどうぞ(´ー`*) (2017年10月13日 20時) (レス) id: 2443de6131 (このIDを非表示/違反報告)
渡邊(プロフ) - ((MOE.moena))さん» コメント返信遅くなってしまい申し訳ありませんでした…!応援ありがとうございます!不定期更新にはなってしまいますが、どうぞ見てやって下さい(´ー`*) (2017年10月13日 20時) (レス) id: 2443de6131 (このIDを非表示/違反報告)
黒狐コハク(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください!応援してます! (2017年7月24日 15時) (レス) id: 5ba6ab7e8b (このIDを非表示/違反報告)
((MOE.moena))(プロフ) - 面白すぎます!!更新楽しみにしてます!! (2017年7月21日 18時) (レス) id: 96d33f0c34 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渡邊 | 作成日時:2017年1月13日 17時