穏やかな時間 ページ33
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15時のティータイムの時間を過ぎ、少し慌ただしかった一時をなんとか乗り越え私の勤務時間が終わりを迎えようとしていた。最初はカウンターの席にいたメア君だったが、隣に他人(うちの常連さん)が座ったりしたのがストレスだったのか、4人用のテーブル席に移動していた。そろそろメア君に声を掛けておこうと重いカウンターを出ようとすると、店長がちょんちょんと肩を突いてきた。
「店長?」
「今ぐっすりだから、もうちょっと休ませてあげたらどうかな?」
「ぐっすり…?あ、」
カウンター越しにメア君の方を見ると、家から持参してきた人形をぎゅっと抱きしめながら窓に頭を預けてうたた寝していた。ここ暫くしっかり眠れていなかったのか、目の下にはうっすらと隈が覗える。ふと、夜中に起きた時の彼の姿を思い出した。実は夜中に彼が起きた時に私も目が覚める事が多々ある。私が起きてた事に彼が気付いたのはたったの一度だけであるが、そのもう少し前から私は彼が眠れていない事を知っていた。知っていながら、きっと原因は故郷とこの世界の事だろうと予想し、敢えて何も聞かなかった。そんな彼が僅かな時間だが眠る時間を取れているのだ、起きるまでそっとしてあげよう。
「あのくらいの歳ってやんちゃな子が多いけど、メア君は賢くて良い子だね。可愛いなぁ」
「お客さんに魔法の呪文唱えた時はどうしようかと思いましたけどね。ノリの良いお客さんで良かった」
「あはは、あれは思わず大笑いしちゃったなぁ。大人しい子かと思ってたらいきなり何か始まってびっくりしちゃったよ」
「お騒がせしました…。家ではあの人形と遊ぶか本を読むか勉強するかで、さっきみたいに人を巻き込んでの遊びは全然しない子なんですけど…」
「あれ?家ではキュアランごっこやらないの?」
「やらないです」
くすくす笑いながら話す店長はとても楽しそうで、今日連れて来て良かったかもしれない。メア君がどう思ったかはわからないが、そもそもここに行くと言ってくれた事がまず大きな進歩だ。何がきっかけだったかはわからないが、ずっと家にいるよりは良い傾向だと思った。
「またいつでもメア君と一緒においで?僕はいつでも歓迎しているから。ね?」
「…はい。ありがとうございます」
私の考えを読んだかのタイミングでかけられた言葉に、胸の奥が温かくなるのを感じた。穏やかな顔で寝ているメア君も、暖かな日の光を浴びてとても暖かそうだ。
(あったかい1日)
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渡邊(プロフ) - 黒狐コハクさん» コメント返信遅くなってしまい申し訳ありませんでした…!応援ありがとうございます!ネタが尽きたらリクエスト募集も考えてますのでお気軽にどうぞ(´ー`*) (2017年10月13日 20時) (レス) id: 2443de6131 (このIDを非表示/違反報告)
渡邊(プロフ) - ((MOE.moena))さん» コメント返信遅くなってしまい申し訳ありませんでした…!応援ありがとうございます!不定期更新にはなってしまいますが、どうぞ見てやって下さい(´ー`*) (2017年10月13日 20時) (レス) id: 2443de6131 (このIDを非表示/違反報告)
黒狐コハク(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください!応援してます! (2017年7月24日 15時) (レス) id: 5ba6ab7e8b (このIDを非表示/違反報告)
((MOE.moena))(プロフ) - 面白すぎます!!更新楽しみにしてます!! (2017年7月21日 18時) (レス) id: 96d33f0c34 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渡邊 | 作成日時:2017年1月13日 17時