13.夏はこれに気をつけなきゃいけない ページ15
7月上旬、セミが鳴いていて、とにかく暑い。
そして3限。このクソ暑い時間に体育だ。まあ、私は身体が弱いからあんまりやらないけどね。
「あっついだろうなぁ…」
この炎天下の中男子はサッカーだ。
「穂刈くんすごいなぁ……あの人なんでも出来ちゃうんだね…………村上くんも上手いなぁ………ん?」
私は一人だけ気になる動きをしている人を見つけた。
「……あいつ、どうしたんだろう…」
いつもより明らかに動きが鈍い。こういう時、私のサイドエフェクトは便利だ。
「………まさか…」
次の瞬間、そのまさかが起きてしまった。
「……!?おい、カゲ!?」
ずっと気になっていたのは雅人だ。明らかにおかしいと思っていた。雅人が倒れる前に受け止めた。
試合は中断、先生も駆け寄ってきて雅人に声をかける。
「影浦!!大丈夫か!?」
「…………せぇな…気持ちわりぃもん刺すんじゃねぇよ…」
具合が悪くても反抗する元気はあったのかは定かではないが、恐らく皆が自分を心配しているのでいつもと感じが違うのだろう。
どうしよう、向こうに行きたいけど女子の授業はテニス。テニスコートはグランドのすぐ隣だが、男子のところまでは遠すぎる。
「どうしたの?ぼーっとして…あれ?なんか集まってる…」
こっちの授業も中断されて、皆ぞろぞろと様子を見に行ってる。
「詩瑠羽ちゃん、あれ、影浦くんじゃない?」
言われなくたってわかってる。雅人も先生も声が大きすぎてこっちまで聞こえてくるから。
男子の群がりをかき分けて村上くんに身体を支えられている雅人の顔を覗き込んだ。
「雅人、顔を見せて」
「……やめろ、見んな」
前髪を上げようとした手を払われてしまった。
「お願い。」
「見ないでくれ、頼むから。」
それは懇願だった。嗚呼、そんなこと気にしなくてもいいのに。
「つまらない見栄を張らないで。」
きっと弱ってる自分を見られるのが嫌なんだ。そりゃそうだろう。私だって嫌だもん。
「雅人、お願い。君の顔が見たい。」
顔じゃないと雅人の状態を読めない。
「…………………………」
雅人は渋々顔を覆う手を退け私と目を合わせた。
「……………雅人、多分熱中症だよ。保健室に行こう?」
「………………」
結局雅人は反抗することを諦め、大人しく穂刈くんに担がれて保健室に行った。
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作者名:姫蘭華 | 作成日時:2019年12月27日 17時