クソガキ【ワールドトリガー】 (ページ16)

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クソガキ 14 ページ16

「……………タバコ吸いたい…」

屋上で警戒区域全体を見渡しながらボソリとそう言った。聞き手のないその呟きは寒い冬の空気に溶けて消えた。

人為的に発生させた霧は警戒区域を覆い尽くし、辺りは雲海のようだ。

「…………レーダー無しじゃ戦況の把握も難しいわね。さて、どうしたものか…」

とは言え私の目は霧の中でも物の姿をハッキリと捉えることができる。レーダーがなくともどうにでもなるのだが…

「ここでこうしてるのも暇ね。」

結論、暇である。かれこれ1時間近く経っているだろう。空を飛ぶトリオン兵もいなくなったし、完全に私は暇人だ。

「……！紫苑さん…」

その声に気づいて振り返ると

「あんた達…」

奈良坂、古寺、そして当真がいた。

「基地内をどれだけ探してもいないと思ったら…」

「なんかあったの？」

古寺が冷や汗を頬に浮かべながら

「人型が基地内に侵入してきて…」

「…………それで？」

「忍田さんと風間隊と諏訪隊が撃退したんだが…」

古寺と奈良坂は肝心なところで口を噤んだ。

「………別の人型が現れて仲間を殺して、トリガーだけ持ってったらしいぜ」

当真が重々しくそう言った。

「………なるほど。霧を抜けられたのは私も感じ取ってた。おそらく相手も気体になれる能力があったんでしょう。」

私は警戒区域に視線を戻した。

「厄介なことになりそうね。」

私の目には見えているけど、他はそうでは無い。

「あの…」

「ああごめん、本題がまだだったね。」

奈良坂が真剣な眼差しで私を見つめた。

「人型と戦闘中の出水の援護をしたいんです。この霧の中でも目が利くようにしてください。」

「なるほど。よし分かった。3人ともこっちに来て。」

私は自分のトリオンを使い、地面に陣を敷いた。

「『我の使徒に光の目を授けよ』………これでいいと思うよ。」

古寺が何か言いたげだった。代わりに当真が口を開き…

「紫苑さんのトリガーって…なんつーか、スゲー未知だよな…」

「自分の力を分け与えるときとか、陣を使うときは自分のトリオンを使わなきゃだからね。」

私は鎌を作り出して

「みんなして私を｢死神｣って言うけど一応モチーフは魔女なんだよ？」

屋上から跳んだ。

「さて、そろそろ暴れようかしら。」

私は目を光らせ、走り出した。