#吸血鬼(kin×kir) ページ9
kir side
夜中に窓を叩く音がした。
虫がぶつかってるのか…？と思った俺は窓を開けた。
その後すぐに突風が吹き、月明かりに照らされたひとつの影を目にした。
｢おはよう、きりやん。夜だよ。｣
満月の夜、俺は吸血鬼に出会ってしまった。
遡ること前日の夜中、友達のきんときと家の近くの公園にあるブランコを漕いでいる時だった。
｢きりやんはさ、｣
｢なに？｣
｢吸血鬼って存在してると思う？｣
｢はぁ？吸血鬼ぃ？｣
簡単な雑談をしている中、突然ベクトルの違う話が始まった。
また馬鹿なことを言い始めたな…と思ったが、彼の顔はふざけて物を言っているような顔ではなかった。
少し思考し、ひとつの結論に至った。
｢まぁいるんじゃねぇの？｣
｢へー、なんでそう思ったの？｣
｢見たことないんだから存在してるかなんて分かんないでしょ。なら居てもおかしくないよね。｣
｢なるほどねぇ｣
なんて会話をしたのが昨日の夜だ。
そんな会話をした相手がまさか吸血鬼だなんて誰が気付くんだよ。
｢ビックリした？｣
ビックリしたかと言われればしたかもしれない。でもそう言うのも癪だから言わないことにした。
しかしよくよく考えてみれば辻褄が合う。
きんときは肌が弱くて直射日光を浴びるのを避けていた。俺と会うのは必ず夜だった。そして彼の背中から生えている羽。
全て総合した結果、彼を吸血鬼だと信じるのは容易かった。
｢何しに来たの｣
｢あれ？思ってた反応と違うんだけど…｣
｢別にビックリもしないし｣
｢…へー、やっぱきりやんはいい人間だね｣
いい人間、それは自分だけだったのかと思うと高揚感がある。
再度なにをしに来たのかと問えば、彼は満面の笑みで手を差し伸べた。
｢きりやんを俺の眷属にしようと思って！｣
吸血鬼の眷属とは、言わば同族で配下にある隷属身分の者、と言うのが正しいのだろう。
その手をすぐに取ることは出来なくて、困惑しながらも感情を声に乗せた。
「え、眷属？俺が？きんときの？｣
｢そ、だからきりやんに俺の事もっと知ってもらって好きになってもらおうと思ってね｣
俺に微笑みの顔を向ける彼は、いつもの彼と同一人物だとは思えない。
｢そんなん出来るか分かんなくね、？｣
｢出来るよ。だって…｣
『きりやんは《いい人間》だからね。』
そう言う彼の瞳はギラついていて、俺の視線を離さない。
きっと彼の気持ちは本気そのもので、俺はいつか彼に絆されてしまうのかもしれない。
やり直しの果てに* (shkkir)(nkmkir要素あり)→←ここだけの話* (nkmkir)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 47人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
