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「で?何があったの」
「あー…昨日鏡見ながら自分で前髪切ってたんだけどさ、切った前髪って鼻に乗るじゃん?」
「乗るね」
「その乗った髪がさ、くすぐったくてムズムズしちゃって…」
「くしゃみが出たから勢いで切りすぎてしまったと…」
「そういうこと…w」
きんときが自分に眉を下げて呆れたように笑う姿はいつもでは見られず、新鮮な気持ちになる。
「こんなことになると思ってなくて今めっちゃはずいんだよ…」
「俺はいいと思うけどな」
え?と言い固まるきんときを気にせず言葉を続ける。
「別に変でもないし、そのままで居ればいいじゃん」
「やだよ…w」
「この前髪のきんときもいいと思うけどね」
再度驚いて目を見開き、視線を泳がせる恋人が面白い。
素直になるだけでこんなに焦ってくれるなら、もう少し素直にぶつけてみてもいいかもしれないな、とも思ってしまう。
「…なんかお前今日素直すぎる気がするんだけど…」
「え?いつも通りでしょ」
「…俺のこと可愛いって思ってる?」
「え、まぁ、うん。なに?」
「…ふーん」
少し口角の上がった気がする彼の顔は、何物にも代えがたい。
あ、じゃあ、ときんときが指を刺したのは、俺の胸ポケットに付いていたスマイルマークのヘアピンだった。
「スマイルのそのピン貸してよ」
「え、なんで?」
「好きなら貸して」
「…はい。」
取って手渡すとパチッと音を鳴らし、自分の短い前髪を俺のピンで止めた。
「どう?」
「…まぁ、」
「…さっきの素直さどこいったんだよ」
「…かわいいよ」
「ふふ、じゃあコレ前髪伸びるまで借りとくから!」
「え、」
「また放課後な」
少し驚いた俺をその場に置いて、ニコニコと上機嫌に歩き去っていった。
もしかしたら最初からこれを狙っていたきんときの策略かもしれないな。
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旧スキンのkinさんを見て書きたくなったものです。
パッツンっていいですよね。
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