Episode198 ページ49
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今いる場所をまっすぐ行けば基地。右左にそれぞれ道があって、丁度その真ん中に私達三人は立っていた。
「何をしている」
左の道からそう声が聞こえた。何でだよ、少し最後に基地を見ようって、それだけだったのに。
「おーしゅーじじゃん、卒業おめでと」
「よー三輪」
「お前が時間より前に来るとは珍しいな、陽介」
「何、お前ら待ち合わせ？」
「そー、しゅーじが付き合えって言うから」
「出水、お前は用事でもあるのか？」
「おれは隊のミーティング早めに着いとこうと思って。夜からなんだけど暇だし」
三輪まで集まってきて、以前までありきたりだったその光景が、今はどこか息苦しかった。
「あれ〜〜亜桜ちゃん！みんなも！」
「随分揃ってるな」
「う、宇佐美ちゃんに奈良坂……？」
いやいや、と私の笑顔もひきつる他なかった。卒業したこの日に、私達が出会ったこの場所で、このメンバーが揃うなんて。どうしてもあの頃を、まさかボーダーを休む日が、太刀川隊を辞める日が来るなんて思ってもいなかった頃を思い出してしまう。
あの頃の私には二度と、戻れない。
「みんな基地に用？アタシは風間さんとこに行くんだけど」
「奈良坂は訓練か？」
「そうだ」
宇佐美ちゃん、三輪、奈良坂の会話がそこまで繋がって、「お前は？」の声がした。
「A、お前は？」
出水が言った。それを。途端にみんなが私の顔を見て、私は「あー……」と笑顔を作ることしかできなかった。自分の足元に、真っ赤なラインが引かれているような気がした。このラインの向こう側は光り輝いていて、私のいる側は少し薄暗い。
「私、は、このまま帰るかな」
「ふーん」
返事をしたときの出水の感情を読み取ることは出来なかった。会話が終わると隣にいた米屋がスッと前に歩きだして、私は米屋の背中を眺める。
「そろそろ時間だろ、行こーぜしゅーじ」
「俺ももう訓練の時間だ」
歩き出した米屋の隣に三輪が並んで、そしてあとから奈良坂もその隣に並んだ。三人が基地の正面入口の方へと、歩いていく。これからもずっとその背中をみていたいと、そう思わされた。どうか、みんなの未来が明るいものでありますように。いつか私が、その光に肩を並べて歩くことができますように。
「アタシも行くね」
続いて宇佐美ちゃんがひらりと手を降って、米屋たちとは違う入り口に向かって消えていった。その場には私と出水だけが残って、二人の影が伸びていた。
「……おれも、もう行くわ」
「うん」
「じゃあな」
それを合図に、私と出水は反対方向へ足を進めた。
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亜桜(プロフ) - サクラさん» はじめまして、コメントありがとう御座います！！すごく嬉しいです……！こちらこそ数ある作品の中から見つけて下さりありがとうございました！ (2022年5月29日 1時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - はじめまして！作品一気に読ませていただきました。後半ボロ泣きしながら読みました。素敵な作品をありがとうございます！ (2022年5月24日 1時) (レス) @page50 id: 99a13ff01b (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - ペコの助さん» こんばんは、コメントありがとうございます！お言葉だけで大変光栄です。ありがとうございます。そしてご指摘大変助かります！見落としておりました;;なおしてきます！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - 最後に非常に申し訳ないのですが、（親友）の場所が（旧友）になっていて変換ができていません。意図的でしたらすみません。頑張ってください！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - こんばんは！つい先日、この作品に出会ってから一気に読み進めてしまいました。心理描写諸々、とても素敵で何回も読んでいます。本当は単行本、購入したいのですがまだ、親の目があり難しくとても悲しいです....。これからも応援しております！ (2022年2月8日 1時) (レス) @page50 id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2019年2月10日 13時
