Episode195 ページ46
米屋side
太刀川隊を抜けた。亜桜が。弾バカの口から訊いていたけれど、本人からは訊いていなかったから、無意識に踏み込まないようにしていた。
「私、太刀川隊やめた」
「おー」
「ボーダーも、しばらく休むことにした」
「おーおー」
学校。帰り道。ついに打ち明けられた、亜桜Aの口から。やっとオレにも話してくれたことが、嬉しかった。
「なにそのリアクションの薄さ！」
「だってもう吹っ切れてるみてーだからさ」
言うと、亜桜は「え？」と返した。
「お前なりに色々考えて出した答えなんだろ？」
「うん」
「ならオレは何も言わねーよ」
オレに話すようになる頃にはいつも、亜桜の中でそれは解決しているのだ。だから今更オレがどうこういうことはない。賛同し、その道を応援することしかできない。でもこの役目のことも結構気に入っていた。亜桜が悩み抜いて導き出した答えを、全部終えたあいつ自身の口からどうやって報告されるのか想像するのも悪くなかった。
「……米屋のそういう優しさに、ずっと救われてきたよ」
訊いて、オレは息を呑んだ。
「深く聞かないのに、ずっとそばにいてくれる。違う話題を持ちかけて笑わせてくれる。私が決断したことを応援してくれる。三年間、ずっとその優しさに感謝してた」
思いもよらない言葉が目の前の女から出てきて、オレは目を丸くするしかなかった。
踏み込まなかったのは怖かったからなのに、オレはずっとそれを欠点だと思ってきたのに。それをお前は優しさと呼んでくれるのか。物は言いよう、だな。
「あ……いやその、卒業まであとちょっと、よろしくね、米屋」
「はは、どーせ高校も同じだろ」
「そうだけどさ」
オレも亜桜も、ボーダー推薦で三門第一に進学が決まった。ついでに弾バカも一緒だ。あとオレ的に嬉しいのはしゅーじも一緒だということ。そう思うと楽しい高校生活が容易に思い浮かんだが、同時にオレだけが亜桜と同じ学校で過ごす日々は本当に終わるんだなと、改めて実感した。
「三年間、いろいろあったなー」
「なにそれ、テンプレじゃん」
「言ってみたかったんだよ」
何かが終わるとき、人はそれを振り返っては、いろいろあった、と思いを馳せる。オレはそういうみんながやっていることには乗るタイプだし、こういう言葉が言えるような三年間を過ごしたいと思っていた。そして、本当に過ごせてしまった。
「ま、どう考えても八割はボーダーだったけどな」
「ほんとにね」
オレらの生活の基準は、いつからかボーダーになっていたんだよな。
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亜桜(プロフ) - サクラさん» はじめまして、コメントありがとう御座います！！すごく嬉しいです……！こちらこそ数ある作品の中から見つけて下さりありがとうございました！ (2022年5月29日 1時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - はじめまして！作品一気に読ませていただきました。後半ボロ泣きしながら読みました。素敵な作品をありがとうございます！ (2022年5月24日 1時) (レス) @page50 id: 99a13ff01b (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - ペコの助さん» こんばんは、コメントありがとうございます！お言葉だけで大変光栄です。ありがとうございます。そしてご指摘大変助かります！見落としておりました;;なおしてきます！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - 最後に非常に申し訳ないのですが、（親友）の場所が（旧友）になっていて変換ができていません。意図的でしたらすみません。頑張ってください！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - こんばんは！つい先日、この作品に出会ってから一気に読み進めてしまいました。心理描写諸々、とても素敵で何回も読んでいます。本当は単行本、購入したいのですがまだ、親の目があり難しくとても悲しいです....。これからも応援しております！ (2022年2月8日 1時) (レス) @page50 id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2019年2月10日 13時
