Episode167 こぼれ桜 ページ18
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年が明けた。
「また何か異常があればいつでも来てくださいね」
おめでとうございます、と医者が加えて言って、私に花束を渡す。「ありがとうございます」と私は返して、それを受け取って自分の家の車に乗り込んだ。
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「先生、お久しぶりです」
「亜桜？大丈夫なのか？」
「無事に退院したんで、大丈夫ですよ」
基地の医務室。今日はトリオン体ではなく生身だ。私は先生の問に答えながら、彼に向かい合うように座る。今日私は無事に退院し、SEについてこの人に診てもらうために、ここへ来たのだ。
「そうか良かった。で、症状は？」
「えーっと……年明け前は、特に視聴覚が過敏になっている感じがあったんですけど。でも今は、何も感じないんです」
SEの不調は、年末ほどの時期から、種類が変わった。
「……そうか」
ある日突然、朝目覚めるとSEが使えなくなっていた。症状を告げると先生が悩ましい顔をして、それから診察が始まる。初めて来た時と同じように、普通の病院と変わらないような検査が主だった。
「お待たせ」
しばらく待つと、結果が出た。先生がまた椅子に座って資料に目を通す。顎に手を添えてから、また先生が口を開いた。
「どうやら五感の数値が変化してるみたいだ。嗅覚がほぼゼロになったり触覚と味覚が前より更に鈍くなってたり、何より視聴覚が普通の人と変わらなくなってる」
以前までは、視聴嗅覚の数値が人より高い代わりに、味覚と触覚の数値が人より低かった。だからプラスとマイナスのバランスがとれていて、合計すると普通の人と変わらなかった。しかし、今回は合計がマイナス。プラスになっているものが何も無いということだ。
「理由として考えられるのは精神的ショック、かな」
言いづらそうに、先生が告げた。
「初めて来た時にも言ったけど、数値は変化する。これから回復する可能性は高いし、そんなに心配することない」
「……ありがとうございます」
かさ、と先生が手に持っていた資料を机に置いて、私の顔を見つめた。遠征で何があって、こうなったということには勘づいているのだろう。もちろん訊いてくるようなことはしないが。診察結果も出たし、礼を言って私が椅子から立ち上がった、その時だった。
「先生、」
後ろから声がして、振り返るとそこに居たのは。
「え、Aさん」
「菊地原くん？」
確か初めて会ったときは、彼が診察を受けている時に私がここに入室したんだっけ。呼ばれてから、彼が私の名前を覚えていてくれたことに気が付いた。こうして会うのは何だか久しぶりだ。
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亜桜(プロフ) - サクラさん» はじめまして、コメントありがとう御座います！！すごく嬉しいです……！こちらこそ数ある作品の中から見つけて下さりありがとうございました！ (2022年5月29日 1時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - はじめまして！作品一気に読ませていただきました。後半ボロ泣きしながら読みました。素敵な作品をありがとうございます！ (2022年5月24日 1時) (レス) @page50 id: 99a13ff01b (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - ペコの助さん» こんばんは、コメントありがとうございます！お言葉だけで大変光栄です。ありがとうございます。そしてご指摘大変助かります！見落としておりました;;なおしてきます！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - 最後に非常に申し訳ないのですが、（親友）の場所が（旧友）になっていて変換ができていません。意図的でしたらすみません。頑張ってください！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - こんばんは！つい先日、この作品に出会ってから一気に読み進めてしまいました。心理描写諸々、とても素敵で何回も読んでいます。本当は単行本、購入したいのですがまだ、親の目があり難しくとても悲しいです....。これからも応援しております！ (2022年2月8日 1時) (レス) @page50 id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2019年2月10日 13時
