Episode160 ページ11
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病室の中庭。そのベンチに二人で並んで座って、最初に言葉を発したのは太刀川さんだった。
「とりあえず、年明けまでは任務休んでいい」
「トリオン体になれば戦えるけど、いいんですか」
「体はそうでもお前がキツいだろ」
私は、怪我をした。怪我をしたけれど、トリオン体には関係ないから、任務に出ようと思えば出られる。それでも休ませてくれるのは、この人の優しさなのだろう。
「……訊かないんですか、何があったのか」
「お前が言うまで待つ」
この人はこういう時本当にずるい。変に詮索してこない上に責めたり怒ったりもせず、理不尽なことも言わない。任務まで休ませてくれる始末だ。
「ーー殺したんです」
手が震えた。
「……親友を？」
あのネイバーが、私がずっと会いたがっていた親友だと予想でもついていたのか、太刀川さんは驚きもせず淡々と訊いた。太刀川さんが奈那と戦った時の私は明らかにおかしかったし、きっとそこで勘づかれたのだろう。
「生身のあいつを、刺して、……」
涙が出なかった。ただあれを思い出すことが怖くて、自然と自己防衛のように記憶が閉ざされる。鮮明には思い出せなかった。
「もういい」
苦しそうな私を見かねて、太刀川さんは頭を撫でた。私はそれ以上言うのをやめた。
「……多分、近いうちに上から呼び出しがあると思う。けど、言いたくないことは言わなくていい」
上、とはボーダー上層部のこと。当然遠征でのことを訊かれるに違いない。帰還する元凶を作ったのは私だからだ。彼はボーダーという組織の、Ａ級一位部隊の隊長としては良くない発言をした。だけど、太刀川慶らしい発言だなとも思った。私の信頼する人間としては、ありがたい発言をした。太刀川さんのおかげで心が軽くなるのはもうこれで何回目なのだろう。
「ありがとうございます」
「ん。じゃあ寒いし中入るか」
俺はもう帰る、と太刀川さんは加えて立ち上がった。私も立ち上がって、自動ドアをくぐった。そして、私は太刀川さんより先に背を向けて歩き始める。すり足だから、スリッパが擦れる音が響いた。
「A、」
「？」
呼び止められて、私は振り返った。少し遠いところにいる太刀川さん。
「守ってやれなくてごめんな」
「……！たちか、」
ひらり、と手を振って、その人は私に背を向けていってしまった。
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亜桜(プロフ) - サクラさん» はじめまして、コメントありがとう御座います！！すごく嬉しいです……！こちらこそ数ある作品の中から見つけて下さりありがとうございました！ (2022年5月29日 1時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - はじめまして！作品一気に読ませていただきました。後半ボロ泣きしながら読みました。素敵な作品をありがとうございます！ (2022年5月24日 1時) (レス) @page50 id: 99a13ff01b (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - ペコの助さん» こんばんは、コメントありがとうございます！お言葉だけで大変光栄です。ありがとうございます。そしてご指摘大変助かります！見落としておりました;;なおしてきます！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - 最後に非常に申し訳ないのですが、（親友）の場所が（旧友）になっていて変換ができていません。意図的でしたらすみません。頑張ってください！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - こんばんは！つい先日、この作品に出会ってから一気に読み進めてしまいました。心理描写諸々、とても素敵で何回も読んでいます。本当は単行本、購入したいのですがまだ、親の目があり難しくとても悲しいです....。これからも応援しております！ (2022年2月8日 1時) (レス) @page50 id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2019年2月10日 13時
