Episode192 仇桜 ページ43
出水side
最後、最期。今日で、太刀川隊の亜桜Aは死ぬ。
「太刀川隊現着、処理を開始します」
その声でそのセリフを訊くのも、これが最期だ。その隊服を着たお前を見るのは、これで最期だ。
「出水、京介、援護頼むぞ」
「「了解」」
『向こうからもう一匹近づいてきてるから気をつけて〜〜』
今日は、Aがいる状態で務める最後の防衛任務。
太刀川さんもAも何も説明しないから、おれは大体のことを柚宇さんと京介に話した。そのしばらくあとに太刀川さんがおれたちに謝って、そしてさらにその数日後、Aは太刀川隊の隊室で、正式に辞めることが決まったと全員の前で話した。
『あっ、亜桜ちゃん後ろ……！』
グサッ
『トリオン体活動限界、ベイルアウト』
それはとても簡単に終わった。No.2アタッカーの実力を誇ったAが、こんなにもあっさり終わった。
この日確かに、太刀川隊の亜桜Aが死んだ。
―――Aside―――
ザアアァァァァ……
天気は急変、外はすごい雨だった。
「おいこら」
不意に後ろから声をかけられて振り返ると、そこには一本のビニール傘を持った出水が立っていた。そいつはパンっ、と傘を差すとその中に強引に私を引き込んだ。
「ありがたく思えよ」
「……前も、こんなことあったよね」
あの時は確か、私が風刃の適合者に選ばれた時だ。相合傘ではなくて、予備の折り畳み傘を貸してくれたっけ。
「……」
「……」
黙って、足だけが動いていた。ぴちゃ、ぴちゃ、と小さな雨音。
「ーー辞めるんだな、まじで」
「うん」
「後悔しないんだな」
「うん。私、ボーダーになったこと後悔したくないから」
出水が私の方を見ているような気がしたけれど、私は自分の足元から視線を動かさなかった。
「ボーダーで良かったって心の底から思い続けるために、辞める」
「はは、」
少し間が空いて、出水が笑った。出水は楽しいときは笑ってくれるし、意地悪ばかり言われてきたけど、何かあったら心配してくれるし、怒ったときはまっすぐぶつかってきてくれる。私は怒りや悲しみなどの本音を誰かにぶつけることが実は苦手で、だから出水が本音で関わってくれたおかげで、自然と私の本音も引き出されていったような、対等なチームメイトになることができたような気がする。
「今のでなんか納得できた気するわ」
そんな風に笑わないで、私まで泣きそうになるから。
「……今までありがとう、出水」
寂しいけれど、これが私の選んだ道。
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亜桜(プロフ) - サクラさん» はじめまして、コメントありがとう御座います！！すごく嬉しいです……！こちらこそ数ある作品の中から見つけて下さりありがとうございました！ (2022年5月29日 1時) (
レス) id: 8ae19fe800 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - はじめまして！作品一気に読ませていただきました。後半ボロ泣きしながら読みました。素敵な作品をありがとうございます！ (2022年5月24日 1時) (レス) @page50 id: 99a13ff01b (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - ペコの助さん» こんばんは、コメントありがとうございます！お言葉だけで大変光栄です。ありがとうございます。そしてご指摘大変助かります！見落としておりました;;なおしてきます！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - 最後に非常に申し訳ないのですが、（親友）の場所が（旧友）になっていて変換ができていません。意図的でしたらすみません。頑張ってください！ (2022年2月8日 2時) (レス) id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
ペコの助(プロフ) - こんばんは！つい先日、この作品に出会ってから一気に読み進めてしまいました。心理描写諸々、とても素敵で何回も読んでいます。本当は単行本、購入したいのですがまだ、親の目があり難しくとても悲しいです....。これからも応援しております！ (2022年2月8日 1時) (レス) @page50 id: 28c825c318 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亜桜 | 作成日時：2019年2月10日 13時
