Episode086 ページ37
佐鳥side
え?と、混乱が止まらない。少し顔がタイプの先輩で、ふわふわしていて優しくて、繊細な感じの女の子だと思っていたのに、亜桜先輩ってこんなに荒っぽい感じたったのか?
「ご、ごめん佐鳥……悪気は無かった」
「えええ!」
おれの描いていた夢が壊れた瞬間だった。絶対に殺伐とした言葉は使わない人だと思っていのに。
「よかったな佐鳥、早めに誤解がとけて」
「人は見かけじゃないんですね……」
正直に言って落胆した。確かに見た目は好みだったが、今見せられた性格が本性なら彼女に癒されることはなさそうだ。むしろパシりに使われたりいじられたりしそうで怖い。
「え、じゃああの階段で滑って廊下斬った話は嘘だったんですか!」
「いやいや!あれはホント!」
亜桜先輩が以前よりも低い声でそう否定する。本来のこの人はこんな声なのだなぁ、こんな口調で話すのだなぁ。
「あー鬼怒田さんに怒られたやつ?」
「あの時のお前最高だったよな」
出水先輩と米屋先輩?の発言からして、初対面の日に訊いた話は嘘ではないようだ。それを訊いて少し安心した。エピソードまで偽る人ではない様子。
ブブブッ
「、あ、ごめんちょっと電話してくる」
「誰?」
「太刀川さん。プリンの処刑してくる」
不意に亜桜先輩のスマホが鳴って、先輩は不敵な笑みを浮かべながら向こうへ歩いて行った。全然口調が柔らかくない。
「どー佐鳥、あいつの本性知って冷めた?」
「萎えましたよ!」
米屋先輩が面白そうに尋ねてくるので、おれはブーと涙目で叫んだ。ただただ裏切られた気持ちである。
「まー、あいつのこと嫌いになんないでやってくれよな」
仕掛けた張本人のくせに、出水先輩は亜桜先輩を庇う発言をした。出水先輩は性格が悪いのかいい人なのか、微妙に分からない人だ。
「なりませんって」
おれがそう言うと、「お?」と二人がおれの顔を見つめてくる。相変わらず人のことを面白がっている顔だった。
『私も階段から滑った時に咄嗟に弧月で支えようとしちゃってね、廊下ざっくり斬っちゃったことあるんだ』
あの時の亜桜先輩が作り笑顔だったとしても、喋り方や声を作っていたとしても。その事実におれの気が楽になったことは、変わらないのだから。夢は破れたが、人間として嫌いになったり関わりたくなくなったわけではない。……まあ、憧れは一瞬にして砕けちったし、もうあの気持ちが蘇ることはないとしても……。
「A先輩の言葉におれが救われたことは確かですからね!」
説教されることが心底怖かっただなんて、死んでも言えないけれど。
286人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜桜(プロフ) - 深未さん» つけてないですよ〜! (2019年12月18日 8時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
深未 - 夢主ちゃんバックワームつけてないの?笑 (2019年12月18日 0時) (レス) id: cdb3fa391f (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - 霧月さん» そんなに嬉しいお言葉を頂けてうれしいです(T^T)続編更新致しましたのでそちらもよろしくお願いします! (2018年10月8日 12時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
霧月(プロフ) - とても面白いです!!夢主ちゃんの性格も大好きです!!更新楽しみにしてます(≧∇≦*)大変だと思いますが、頑張ってください! (2018年10月8日 0時) (レス) id: 77a041f6c8 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - R.Oさん» ありがとうございます(T ^ T)がんばります!! (2018年8月22日 16時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:亜桜 | 作成日時:2018年6月15日 17時