【WT】ペーパー・ムーン【メモ帳】 (ページ17)

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kn「俺、高1の時からAに片思いしてたんだよ。大学も学部も、実は追っかけてきたの」

サークルの新歓で先輩達からお酒を飲まされて、頭がホワホワしていたとき、きんときからそう告白された。

それを聞いてた先輩とか同学年の人達から囃し立てられて、その場で公開キスをしたのが全ての始まり。

しこたま酔って朝起きたら、全く記憶は無かったけど、ちゃんと自分の家のベッドで寝てた。
問題は、同じく全く記憶がない状態のきんときが、同じベッドで裸で寝てたってこと。

きんときはそれ以来一滴もお酒を飲まなくなった。

もういろんな人にいろんな角度から撮られた公開キスの動画とか写真を見せてもらって、そのあと酔った私をきんときが送ってったって所まで話しを聞いて、まぁ、何となくコトの顛末は察したよね。

乱れた大学生がどうのこうの、二度と言えなくなったわ。

kn「初めてだったの？！いや、実は俺も……だったんだけど。その、Aが嫌じゃなかったら、……なんて言うか、ちゃんと、しない？」

そう言われて。した。けど。しましたけど。
ちゃんとするって「付き合う」ってことじゃなかったの？
私はてっきり「付き合ってる彼女」にしてもらえたと思ってたよ？

きんときは誰にでもニコニコしてて、誰にでも平等に接する。きんときのそういう優しいところが好きになって、やがて嫌いになっていった。

私はきんときの特別じゃない。

それってつまり、彼女とは、違うんじゃないかなって。

もちろん2人きりで遊ぶし、お互い一人暮らししてる家に行けば関係だって持つわけで。
それでもきんときからの扱いは、前と何ら変わらない気がした。

だから聞いたのだ。
『私って、きんときの彼女だよね？』って。

学校を休んで3日目の朝、一限の講義が始まる30分前。きんときからの着信で目が覚める。

毎日電話が掛かってくるし、毎日メッセージも届くけど、全部未読無視。

スマホを見れば、充電器を差し忘れてたせいで4%しか電池がない。ロック画面にぽつんと浮かぶ一筋の赤色しかない電池マークを眺めていれば、またきんときからの着信が入った。

通話ボタンを触らないように充電ケーブルを差そうとしたところで、スマホはついにバッテリー切れで画面が暗転する。

同時にきんときからの着信も落ちて、やっと静かになったスマホの電源を切ったまま、もう一度ベッドに潜り込んだ。