【WT】ペーパー・ムーン【メモ帳】 (ページ4)

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ポコン、とメッセージアプリの通知が鳴った。

A ：“寝るね、おやすみ”

きりやんはテーブルに２つ並べた時計を見る。
片方は現在時刻。そしてもう片方は、「A」と名前の書かれたシールを貼った、13時間遅れの時計。

きりやん：“gnsd,ilu”

(good night(おやすみ、),sweet dream(いい夢を。),I love you(愛してる))

それだけ返せば、ハートのスタンプが返された。

kr「はやく帰ってこないかな」

自分でAの背中を押した、アメリカへの留学。たった3年とタカを括っていたのは、僅か半年前のこと。

きっとあと2年半、自分は色々なものを無駄にし続けるのだろう。

kr「……いや、バカじゃん。節約してアメリカ行くか〜」

デリバリーの注文画面を閉じれば、Aの写真がロック画面で笑っている。

何をしていても、何を視界に入れても。いつもいつもAの事を考えているのだ。だからきっと、Aのためにお金を貯めて海を渡るくらい、自分には簡単なはず。

そう、Aがいれば。

家を買うとか、指輪を買うとか。それがAのためだと思った途端、全てが簡単にできる気がしてきた。

kr「待っててね、A。俺もがんばるから」

大好きな君が帰ってきたら、もう絶対に離さない。Aがいれば、もう何もいらないから。