【WT】ペーパー・ムーン【メモ帳】 (ページ15)

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漠然と、もっと理想的な恋愛をすると思っていた。

sm「怖い？」

『……ちょっと、だけ』

sm「その、……なんていうか、俺も、初めてだから」

『あの、スマイルさんなら、……痛くても、平気』

いや、途中までは充分に理想的な恋愛だったと思う。でもやっぱり俺も大学生の例に洩れず、バカなことをしたわけで。後半はとんでもない駆け足。

前準備なんてあるわけない。何回か外に出し損ねて、後半は全部普通に中にした。最低だけど、俺はそんな事よりも女の子のベッドを汚した事の方に罪悪感を感じてたのを覚えている。

俺は結局、Aが洗濯してくれた自分の服が乾くまで、バイトもサボってAと“一緒”にいた。

sm「……朝顔育ててんの？」

『うん。キレイでしょ』

夜通し致して、気付けば外は明るくなりはじめていた。クールダウンに窓を開ければ、Aの部屋のベランダには朝顔がプランターに植えられている。

『見て、スマイルさん。咲き始めてる』

太陽に照らされて、紫色の朝顔がゆっくりと、でも確実に、一斉にほころび始めるのがあまりにキレイで。柄にもなく見入ってしまった。

朝顔が咲き綻ぶにつれて、窓枠に並んで座るAの横顔も甘く溶けていく。

太陽のオレンジ色に透けるまつ毛の先や、少し眠そうな瞼の薄い皮膚に、スマイルは思わず唇を寄せた。

『……！スマイルさ───』

sm「好きだよ、A」

びっくりしたAの顔は、男に怯えた顔とは違っている。
俺にしか見せない、女の子の顔。

sm「順番が逆になってごめん。……俺と付き合ってください」

『───』

はい、なんて分かりきった解答は、直接唇の中で受け止めに行った。

開花した朝顔を見損ねたのはAに夢中だったからで、俺を夢中にさせたAのせい。
だから種を取っておいて、来年も育てる約束をした。

人付き合いなんか御免だ。

他人のために自分の時間を費やすのがどれだけバカらしいことか。自分の時間を分け与えるというのは、一番手軽で一番大きな愛情表現なのだから。

俺はそれを、おいそれと誰かにするつもりはない。
コミュ障だとか、スマイルなのに全然スマイルじゃないとか、まぁ、好き勝手に言ってろとしか思わない。

俺はAにしか時間を割かないし、Aの前だけで笑ってればいい。

そういう相手に出会えた事が、本当の幸福だと知っているから。

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　only with you smile：)
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