侵略するおまえ ページ31
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出水は彼女から紡がれるだけ紡がれた自分への嫌悪を建前にした自己嫌悪を浴びて、握る手を少し緩めた。下を向いてしまった彼女の旋毛より後ろが良く見えて、出水は無性に撫で回したくなったのを堪えて恐らく彼女が求めるであろう言葉を懸命に探し、投げかけた。
「おれもおまえのこと嫌いだわ。仲良くしてぇなって思ってたのにめっちゃ避けるし嫌うし」
出水は言葉を続ける。きっとここで素直に出水が甘やかしても彼女は納得せずまた自己嫌悪で死にたくなるだの言い自分を避けるのは明白だ。なら自分も本音をぶつけたっていいだろう、と出水は容赦なくここ最近の不安を暴露し始めた。
出水は単純に嬉しかった。自分が何か嫌なことをしてしまったから避けているのかと心配していたものだから、彼女から当てられた八つ当たりの嫉妬は同時に出水の存在の肯定であり尊敬であることを察したのだ。認めてたから悔しくて泣いてるのだ、そう思えば彼女の今までの行動も少しかわいいもんだと思えた。
「やっと会話出来たと思ったら嫌いって面と向かって言われて訳分かんねーし、なんか腹立つし」
出水の言葉の一つ一つに彼女は小さく返事した。自分が吐露した本音に出水が投げ出さず相打ちをしてくれたように。
「だからごめん」
「ぇ……」
「今おまえに悪口たくさん言って泣かせたから」
「な、ないでないﾞ！」
出水は自分でも甘すぎることを自覚していた。
それでも新しく自分と同じように肩を並べる戦う兵士であり仲間といつまでも不穏な仲でいるつもりはなかった。いくら自分に非は無くとも新しく入ってきたばかりの生意気な後輩の反抗期くらいに思えば、可愛いものだった。
出水がどこまでも良い奴でいる限り、彼女は夜な夜な涙を流して自己嫌悪で苦しむのだ。だが出水の良い奴っていう光はそれすらもまるごと抱き込んで笑ってくれる優しい光で、彼女はボロボロと泣き出した。
「〜〜ッなﾞんでぜんばいがあﾞやまるんﾞだよﾞ！」
「だから言っただろ、おまえのこと泣かせたから」
「うﾞぅ、ごめんなざいﾞ、いずみﾞぜんばい」
「あああやばいやばいおまえ顔こすんな！腫れるだろ！」
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作者名：40 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年2月26日 0時
