そうやって世界を巡らせる ページ18
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「もうすぐ始まっちゃうねぇ」
国近は観戦ブースに集まる人だかりを天井席からぼんやりと眺めながらそう言った。
時間ギリギリまで隊室で後輩2人に構ってた国近だったが、北添のお迎えによりそれは叶わず、こうしてB級ランク戦の昼の部の実況解説に遅刻しないようにと、すぐに降りてこれる天井席に3人集まっていた。これも心配性で面倒見のいい今のおかげであり、北添は今に頼まれてせっせとお迎えをこなし、ひと仕事を終えたように満足気な顔をしていた。
事前に武富からは自由に話してもらって良いと言われている。フランクな2人の会話にちょこちょこ混ざればいいかなあ、と北添が考えていれば当真から訳もなく小突かれる。ダル絡みだ。
「オレと国近とゾエと実況解説なんてよく許可出たなァ」
「ほんとそれ〜」
「おかげでゾエさんまでアホの子に区切られちゃったよ〜」
「い〜じゃ〜ん」
「そ〜だぞ〜」
ふわふわと話す国近につられて語尾の伸びる北添と当真。そうやってポンポンと身のない会話のリレーを繰り返していれば、よく話の種になる彼女の名前が上がる。
「そういや小鍛冶の弟子2人いんじゃん」
「あ、やめたげてよね。非公認だからAちゃん暴れちゃう」
「ゲームで負けた時のおまえじゃあるまいし」
「なんだと！？」
このメンバーじゃなくとも、18歳の仲では彼女の名前はよく上がる。荒船の弟子だったり影浦の弟子だったり、かと言えば蔵内の師匠だったりと関係が濃い故に彼女の名前を出せば大体の話は盛り上がる。
「そういえば今日のAちゃんは大忙しだったねぇ」
「なにしてんだ？最近予約制らしいけど」
「朝から太刀川さんに捕まってぇ、」
「あらぁ」
「で、戻って来て出水くんと前回のランク戦ログ見てて」
「ほー、そういや作戦ときアイツ居なかったもんな」
「Aちゃん気にしてるからそれ言っちゃダメだかんね」
「さすがに当真くんもそこまでしないでしょお」
「おまえらオレのことどう思ってるワケ？」
当真が首元をガシガシとかくと、北添は時計の時間がいい時間になったことに気づき実況解説席に行くよう声掛けた。
やけに上機嫌で返事した国近に、当真が理由を聞けば出水とAが聞きに来てくれると言う。太刀川隊は仲良いいなァ、と返す当真に国近は満足気な声を出す。そんな2人の背中を見ながら北添は微笑ましい気持ちになるのだった。
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作者名：40 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年2月26日 0時
