ぐるぐるの境目 ページ17
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「おーっす、何してんだ？」
イヤホンをしてタブレットに食いつく彼女の頭に出水がのしかかる。うぐ、と苦しそうな声を出した彼女はタブレットの映像を一時停止し、イヤホンを外すと出水の腕をはたいた。
一時停止したタブレットの画面には空閑ＶＳ柿崎隊の真っ最中の映像だ。前回出水が解説席に座ったラウンド5の試合は、彼女は熱でダウンしていてガロプラとの抗戦も参加していなければ、ランク戦も何も見ていなかったのだ。香取には見なくていいと騒がれたが、自分の仲良い友達の試合に加えて自分の隊の先輩が解説しているのだ、見ない訳がなく太刀川同様武富に音声データを強請ったのだ。
太刀川の時見たく等価交換に解説でも頼まれるかと思えば、武富からはツーショットをお願いしますとだけ言われて彼女は武富とツーショットすることで得た音声データ付きの映像をひとり鑑賞していた。
実は武富も彼女のファンの1人であることを、武富がこのツーショットをプリントアウトし額縁に入れることを、彼女は知らずにしばらく過ごす事になる。
「私もこのワイヤーやりたいなぁ」
「おまえこれあったら動きやすそうだな」
「太刀川さん邪魔って言って斬りそうだから出来ませんけど」
「それはあるかもな」
よいしょ、と彼女の隣に座り再生し直したタブレットを見ると空閑が巴の首を落としていた。
「やっぱすごいな〜これやれたら絶対気持ちいい」
玉狛第二の新戦術に彼女の気分は最高潮に盛り上がっている。この戦術はおそらく木虎の入れ知恵だろうと出水が口にするも、気持ちの昂った彼女の耳には何も届いていない。
出水はそんな彼女を可愛いヤツめと内心思いながら彼女との座る距離を少し詰めた。
「そういや今日柚宇さん実況だぜ」
「えっ太刀川隊今期のB級ランク戦みーんな実況解説にいる」
「小鍛冶もやりたい？」
「やってみたいけどウーン……」
「お、私の話〜？」
「柚宇さんこんちわ」
「柚宇さんこんにちは」
「うんうん挨拶ができてえらいねぇ」
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作者名：40 | 作者ホームページ：
作成日時：2021年2月26日 0時
