わからずの異邦人 ページ4
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彼女が眠りにつけずぼんやりと天井を見ていた頃、ヒュースはガロプラの侵攻に乗じて母国に戻ろうと企てていた。
陽太郎が寝たのをしっかり確認し玉狛支部を出ようとしたヒュースだったが、昨日から玉狛支部で寝たきりの彼女の顔を思い出し、ふと彼女部屋へ足を動かしていた。
陽太郎のようにヒュースのことを世話を焼き、笑いかけていたのは紛れもなく彼女だった。捕虜の身だというのに対等に接してくれていた玉狛支部の人間とは違い、本部の人間だった彼女は玉狛支部の人たちのようにそれは暖かくヒュースと向き合ってくれた。そのことにヒュースはどこか恩を感じていたのだ。
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「入るぞ」と相手の了承を待たずにヒュースが扉を開ければ弱った顔した彼女がいた。
彼女はヒュースが来たことを確認すると驚いた顔をして「風邪うつしちゃうからだめだよ」と言うがヒュースは「トリオン体だから問題ない」と突っぱねて彼女の元までやって来た。
「おまえは馬鹿だな」
「みんなにたくさんそう言って怒られた」
「そうだろうな」
困ったように笑う彼女に、ヒュースは特にリアクションを取るわけでもなく鋭い眼光のまま彼女を射抜いた。
「ヒュースは帰っちゃうの?」
彼女は静かそう言った。それは今から帰ろうとするヒュースに宛てたことなのか、それともいつか帰るヒュースに宛てたことなのか、今のヒュースにはわからなかった。
「……本国に帰るに決まってるだろ」
「そっかそうだよね」
「貴様のサイドエフェクトとやらか?」
「そうなのかもね。いきなりなんか寂しいなって思ったんだけど、今はそんなことないや」
「もう寝ていろ」
ヒュースはそう言うと彼女の視界を手で覆い隠した。これ以上話していると何もかもバレてしまうのではないかと、そんな気にさせられたからだ。
そんなことを知らず彼女は、この先の未来が優しいことを察知したのだろう。ヒュースの手を大人しく受け入れ静かに暗闇の世界に意識を落としていった。
ヒュースは彼女が眠りにつくのを確認すると、部屋を後にした。
外からする抗争の音が彼女に聞こえないことを願いながら。
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作者名:40 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年2月26日 0時