サモトラケのニケも失踪 ページ44
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「『1人でも点獲れるようになりたい』？いいんじゃねぇの？」
出水はどら焼きを食べながらそう言った。嵐山隊で学んだことを聞けば木虎の態度に生意気だと呆れたように笑う。
「おれもう教えることなくない？」
「……出水先輩は合成弾の名手だと伺っています。小鍛冶先輩もそうですよね」
「気を悪くしないでほしいけど、少なくともウチの小鍛冶は目指すもんじゃねぇぞ」
「それ烏丸先輩にも言われました」
「京介はいちばん小鍛冶の戦い方理解してるからなぁ」
出水は昔の試合を思い出しながら笑った。暴れ回る彼女を隣からずっとアシストしてたのは烏丸であり、彼女と烏丸のペアはよくランク戦の度に警戒されていたものだった。いえば今の辻と犬飼のペアと近かっただろう。
那須から浴びたトマホークの話をする三雲に出水はどら焼きを食べ終わった指を舐めながら、合成弾は難しいと続ける。
「メガネくんもしかして小鍛冶にも頼んだのか？」
「あ、はい……断られましたけど」
「だろーな。アイツ教えられねーからなぁ。でも目の付け所がいいな。合成弾の精密さや扱い方は多分射手の中だったら一番アイツのが上手いよ。大規模侵攻のときバンバン合成弾撃ってたろ？」
「確かに、あれだけ撃ってればすぐトリオン切れになるはず……」
「燃費いい合成弾作んのがうめーんだよ。効率よく、無駄なことをしないで、すっと作って投げる。それがアイツの射手としての才能で強み」
三雲は太刀川と国近とゲームのコントローラーを握り笑っている小鍛冶を横目で見る。玉狛に来たときの気さくな様子も、大規模侵攻で見せた冷たい目も、射手としての実力がある一面も、三雲は彼女の持つ色々な面を知る度に彼女がわからなくなっていた。
「でもまぁ実践経験積むところだろうな」
「実践経験ですか……」
「……そうだな」
唯我を呼びつける出水は薄く笑う。
彼女は出水と三雲の様子を見ながらぼんやりと考えていた。この間迅に言われた言葉を思い出しながら。
「試合中によそ見か？」
「ッア？！太刀川さんにコンボ決められて負けた？！」
「はっはっは、今日は調子いいな」
「もう1戦！！」
「次は私だよ〜Aちゃんの仇はとってあげよう」
「げ、まじか」
『Aちゃんさぁ、孤月持ってみない？』
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作者名：40 | 作者ホームページ：
作成日時：2020年12月3日 0時
