死を目前にしたひとびと ページ36
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そうして荒船を師匠とし、指導を受け狙撃手として十分に戦えるようになった彼女の狙撃手として初のランク戦は、二宮隊と風間隊との三つ巴でのお披露目となった。
彼女の名前は色々な意味で有名であった。射手詐欺と攻撃手界隈では言われ、時限爆弾製造機と射手界隈では言われていた彼女が、突然狙撃手に転換したのだ。それに加えて解説席に座るのはボーダー隊員皆が憧れる東に加えて完璧万能手の木崎と、その日のランク戦はかなり注目を集めていた。
マップ選択権を持つ二宮隊が選んだのは市街地B。天候は晴れ。
転送が完了すると彼女はイーグレットを大事に抱えた。自分にとっての初めての師匠である荒船も、村上と共に見ているというのだ。普段緊張なんてしない彼女の緊張は、転送前からだった。
『小鍛冶、気ィ張るなよ。何かあったらとりまるのとこ行け』
「大丈夫なよう善処します……」
無線先で『それでいい』と言う太刀川にすぐさまバッグワームを起動させ彼女は高台を目指した。
最初狙撃手で出ると言った時、太刀川を含め誰も反対はしなかった。寧ろ笑っていて「これで戦術の幅が広がったな」とまで言った。頭を撫でてくれるその優しい手つきに、彼女は申し訳がない気持ちでいっぱいになり彼女はどうしてもこの試合を勝ち上がらねばならないと、そう思ったのだ。
「小鍛冶に狙撃手なんてやらせたのはお前の仕業か。太刀川」
「それは本人から聞けよ」
「チッ」
二宮と太刀川は転送位置が悪く早々にかち合ったらしく早々に顔合わせになる。
一方出水は風間隊の合流の阻止のため先に見つけた歌川を追撃、烏丸はその出水を狙う辻の相手をしていた。
今回同じ狙撃手の鳩原を先に止めなきゃいけない。彼女は焦っていた。フリーの犬飼は辻の応援にいなきゃ必ずこちらに狙いを定めてくる。
『Aちゃんすぐ近くに反応あるよ。カメレオン使ってるから風間隊の誰かだね』
「見えないしわからん……」
国近からの無線と送られてきたマップを見ながら彼女はヤケクソになりイーグレットを撃つ。ガンッと音がしてトリオン体に当たる感覚と、漏れ出た黒い煙が薄く立ち上るのを見届けると彼女は急いで持ち場から離れた。
『ナイスヒット〜 今のは風間さんの足だね』
「サイドエフェクト様々だ……」
彼女のサイドエフェクトの恐ろしいところは、勘で撃っても96パーセントの確率で当たるのだ。
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作者名：40 | 作者ホームページ：
作成日時：2020年12月3日 0時
