幸いを敷きつめた ページ30
.
ハイレインは彼女をミラに任せて三雲を狙いに行く。彼女はハイレインの後を追おうとする。
ここにきて大きな問題があった。彼女にはもうトリオンが僅かしか残っていなかったのだ。大規模侵攻が始まってからずっと彼女は最前線で火力勝負をこなしてきた。得意の合成弾の乱発によるトリオンの消費が著しいことも分かっていながら、彼女はこの侵攻で意地を見せ続けた。彼女は大きな賭けに出るしかもう道がなかった。
それは迅の教えてくれた予知通り、三輪が風刃を起動することだった。
先程ミラによって飛ばされた三輪が遠隔斬撃を飛ばせる風刃でハイレインを足止めをしてくれることを願ったのだ。そんな他力本願が許されるのか、彼女は一抹の不安を胸にハイレインの元に向かう。
しかしそれをミラは許さない。彼女に削られた残り少ない攻撃用トリオンを生身の三雲に刺したのだ。彼女に削られすぎたのか何とか急所を避けて刺さるそれは、三雲から体力を奪う。
「アステロイド＋アステロイド」
彼女の願いは届く。
本部基地からの狙撃手の援護射撃の嵐を器用に避けていたハイレインだったが、風刃を刃を受け一瞬の失速を見せる。彼女が合成弾を作り出す瞬間、いつかの斬撃がハイレインを体に刺さったのだ。
彼女は笑う。最後の自分の役目だと。
「ギムレット！！」
隙を見せたハイレインの脳天から彼女は全てのトリオンを使い特大の合成弾をぶつけた。
「三雲く、」
パキリとかわいた音がして彼女のトリオンが尽きて換装を保てなくなる。彼女は迅のお願いごとを遂行できたのだろうか、とぼんやり思った。血を流し倒れる三雲は無事にレプリカを遠征艇に投げ込めたのだろうか、大切な友人を守りきれたのだろうか。彼女はサイドエフェクトで答えを知る。多分大丈夫。そう己の第六感が言う。
遠くにいた迅は、未来を変えてくれた彼女にありがとうとそう呟いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1183人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：40 | 作者ホームページ：
作成日時：2020年12月3日 0時
