願うだけの夢見心地 ページ22
.
『もうすぐそっちにAちゃんが到着するよ』
無線の先の連絡に烏丸は息を飲んだ。
先日迅に言われた予知のことを思い出し、滲むはずもない汗が手に滲んだのを感じた。そんな烏丸の様子に気づいたのか木崎は「心配することない」とだけ告げた。
烏丸が彼女に好意を寄せているのも、だからこそ不安になる気持ちも両方汲み取っていた木崎も、それは同じ事であった。無事が1番に決まっている。だが彼女の努力を心配の一言で侮辱するつもりは木崎は毛頭なかった。彼女は強い。心配される筋合いはどこにもないのだ。
「アステロイド」
目の前で相手をしていた新型が三体の内一体倒れる。
烏丸はこのアステロイドをよく知っていた。ほんの1年前までずっと傍で見てきたものだった。威力重視の博打アステロイドは、彼女以外いなかった。
「小鍛冶、到着しました。玉狛の加勢に入ります」
見上げた先では屋根の上から無線に連絡を入れる彼女の姿だった。
彼女はそのまま降りてきて木崎と烏丸の元にやってくる。
その時だった。嫌な鈍い音と共に目の前でゲートが現れる。嫌な予感のひとつはこれだと、彼女はその時はっきりとわかった。
「彼女はハイレイン殿が見ていた玄民の兵……」
「……ウィザ翁、彼女の回収は？」
「今回の目的ではいのでしなくてよいでしょう。私たちの目的は金の雛鳥の確保です」
「わかりました」
運命のカウントダウンがどこかで始まった音がする。若い角付き近界民がトリガー展開を始めた。
「気をつけてください！あいつらの角は……」
「
彼女は2人の人型近界民を見やった。
ひとりは老人、ひとりは若者。どう見たって手練の者だというのは一目瞭然であった。
「まだ新型2体も生きてる。手負いとはいえあれが絡むと面倒だ。小南」
「3分やる、新型を片付けろ」
木崎がそう言うと小南は自信ありげに笑った。
「1分で十分よ。あたしが戻るまでにやられないでよね」
そう言い飛び出していく小南を彼女は嬉しそうに笑った。小南のどんな時でも胸を張って最前に立てるところが、とても好きだったからだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1181人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：40 | 作者ホームページ：
作成日時：2020年12月3日 0時
