聖者が行進しない ページ3
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「そういや、遠征班はもう帰ってきたの？」
「まだです、はやくて明後日って忍田さんが言ってました」
遠征。雨取千佳の掲げた目的のためにーーー遠征先で行方不明になった兄と友人を見つけるためについ最近チームを結成したばかりの三雲たちはAの言葉に肩を揺らした。
先日宇佐美から受けた説明ではA級の上位が遠征に行ける権利を持っている。
今目の前で迅と離すAは、そのA級1位部隊に所属する、優秀なボーダー隊員なのである。
「こかじ先輩は遠征行かなかったのか？」
三雲が声をかけるのを煽るように、空閑は迅とAに割って入った。
Aは空閑の質問に苦笑いを浮かべる。
「あー……ホントなら私も遠征中なんだけど、遠征前日に事故って入院しちゃったからお留守番してんだよね」
「それはそれは、お大事に」
「これはこれは丁寧に」
丁寧に頭を下げる後輩につられ頭を下げるAに小南は呆れたように言う。「ホントよ、生身で車にぶつかってんじゃないわよ。トリオン体に慣れすぎ」と、小南はAの平身低頭な姿勢とそそっかしい一面を心配しているようだ。
Aは1ヶ月ほど前、猫を庇って事故にあった。車との接触は無かったものの、転がった先で運悪く電柱に頭をぶつけ、そのまま救急車に運ばれた。打ちどころがあまり良くなく、2日は眠っていた。
起きた時には遠征の前日で、その頃にはもうAの所属する隊の隊長は遠征には置いていく決断を本部長に通達していたのもあり、お留守番になったのだ。
Aの退院の日、Aを迎えに来た迅は「サイドエフェクトで分かんなかったの？」と聞いたが「自分のことはあんま分かんないみたい」と苦笑いを浮かべていたのは、よく覚えている話だった。
「コイツら遠征目指してるんだ。小鍛冶は遠征に何回も行ったことあるし、きっと今後遊真たちの欲しい力もくれる」
迅はそういうとAの腰を引き寄せ笑いかける。それに対しAは変なプレッシャーを感じ、乾いた笑いを返すことしか出来ないでいた。
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作者名：40 | 作者ホームページ：
作成日時：2020年12月3日 0時
