あの日見た夢のように ページ19
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烏丸がベイルアウトした。
ワープ使いの女と生き物のトリオンを出す男は、玉狛の新人を狙いまたどこかに消えていく。
「ッ柚宇さん三雲くんのとこまで最短ルートだして!!」
『オッケ〜任せなさ〜い』
自分の無茶苦茶な要望に応えるオペレーターから送られてきた地図を見て彼女はあの日迅に頼まれたことの意味をようやく理解した。
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大規模侵攻が起こるその日、彼女は太刀川と共にいた。それもこれも迅からのお願いの一部なのだが、彼女は烏丸たちと居てくれと言いながら本部で太刀川と居てくれという迅のハチャメチャなお願いにその日までずっと顔を顰めて考えていた。
そんな難しい顔をしている彼女のことを気遣ったのかそうでないのか、真偽は不明であるが太刀川は「学校サボんの楽しいだろ」と笑いながら彼女の頭を撫でた。
「腹減ったな〜飯食いに行くぞ」
「何食べよう」
「国近も呼んでくるか」
「柚宇さん今いいとこだから絶対来ないですよ」
「アイツのゲーム邪魔すると怒られっからなぁ」
同じく大規模侵攻に備えて本部待機の国近は、それをいい事に朝からずっとゲームに勤しんでいる。学校に通っている出水と唯我が羨ましいと言っていたのを思い出す。
じゃあ2人で食いに行くか、と言う太刀川と食堂と向かっていた矢先だった。
彼女のサイドエフェクトが無意識下で働く。少し顔を顰めた彼女のことをすぐに見抜いた太刀川が「そろそろか」と声をかけるものの、彼女は素直に頷くことが出来なかった。
あまりにも嫌な予感がする。
彼女は得体の知れぬ恐怖を腹の底から抱えていた。せり上げてくるモヤモヤとした不安がずっと喉から吐き出しそうで吐き出せない。
「小鍛冶」
「……」
「餅食うか。餅」
「……食堂にあるんですか?餅って」
「あるだろ、多分」
太刀川はそう言ってまた彼女の頭を撫でた。
普段配慮という字の欠けらも無い豪快な撫で方をするのとは違い、優しく壊れ物のように撫でられ彼女は静かに頷いた。
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大規模侵攻編かなり捏造ぶち込みます故お手柔らかにお願い致します
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作者名:40 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年12月3日 0時