前途多難な恋ごころ…(桃) (ページ35)

今日:21 hit、昨日:5 hit、合計:46,009 hit

３５……side赤ページ35

海を眺めながら、10分なのか30分なのかわからんけど静かな時間が流れていた

「ここにね、何回か崇裕と来たことがあるんだ」

ポツリとか細い声で漏らす

濵ちゃん釣りが趣味やったもんな

「そんなとこにしげと来るなんて私アホみたいだよね………ごめん」

俺の顔を見て謝るAは、不安そうで、頼りなくて、

俺の胸を熱くさせるのには充分やった

「しげ………？」

考える間もなく俺はAを抱きしめて、その存在を確かめるように腕に力を入れる

こんなに近い距離でコイツを感じるのは初めてのことやった

『ええよ。

濵ちゃんとの思い出を探したかったんやろ？』

「……………ありがと」

ほとんど聞こえないくらいの声で言うAは、次々と俺の肩を濡らしていった

いつだって気丈なAをこんなにさせてまう濵ちゃんが、いまは憎いわ

俺が力になったるから

濵ちゃんのことなんて忘れるくらい、おまえのこと笑わせたる

そう強く思った俺の想いは、口に出すことはできんかった

「……………逢いたい………」

泣き止むことのないAのなかには、俺の入る隙間なんて１ミリもないのやから