＿＿ ページ35
「先に言うとくけど、僕は別れる気なんか微塵もないからな」
一瞬、場の空気が止まったように感じた。
こいつ、遂に人の心まで読めるようになったのか？
『な、なんでそんな話になるの』
「Aの考えてることは僕が1番わかってるし」
「ちゃんとめっちゃ好きやから」
付き合い始めの頃に嫌という程聞いたはずの｢好き｣という言葉も、今顔が真っ赤になるくらいの効力はあるようだ。
『は、はあ？』
『そ、そんなん言われなくても知ってるし』
「そうやね、不安にさせた僕が悪かったやんな？」
『いやだから！別に不安とかになってないし！』
「ちゃんと言わな伝わらんよな」
『も、もううるさい！帰る！』
私が顔を真っ赤にしたまま楽屋を出ると、ニヤニヤしながら九条が追いかけて来た。
こんな性格の悪いわんこを飼った記憶はないんだけど。
何でもお見通しで、いつも私より一枚上手な九条がちょっと憎らしく思える。
『なんでついてくるの』
「僕彼氏やしなあ〜」
『今から彼氏解雇します』
「Aに全然伝わってなかったみたいやから一応言うとくけど、」
「僕Aと別れるとか考えられへんし、Aが僕以外の人と付き合うとかほんま無理やから、そこはよろしく」
『……』
「なに〜？？Aちゃん照れてるん〜？」
わざとらしく顔を覗き込んでへらへら笑っている九条の顔を手で押しのけ、眉間に皺を寄せたままエレベーターに乗り込んだ。
「今からどっか行く？」
『行かない』
「拗ねてんの？」
『拗ねてない』
「ほな今日家行ってええ？」
『はあ？』
「久々やね、デート」
エレベーターの中、私の声なんて一切耳に入っていないかのように隣で鼻歌を歌っている男。
周りなんて全く気にしていないようで、実は繊細で。
そんなこの人のことを、私は好きになってしまったのだ。
好きになってしまったのなら、全部私のせい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 324人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「芸人」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さき - 芸人さんの言葉遣い操るのうますぎです…最高です！！！これからも楽しみにしています！！！ (2023年1月23日 15時) (
レス) @page29 id: 5ea285ba75 (このIDを非表示/違反報告)
伊入(プロフ) - はじめてコメント失礼します、リクエストなのですが、堂前さんととにかくイチャイチャするお話しがみたいです、よろしくお願いします！！ (2022年1月21日 20時) (レス) id: 6a2f245552 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃむ(プロフ) - 初めまして！九条さんと辻さんにかわいがられて、後輩芸人の主が恥ずかしくなっちゃう話がみたいです！ (2022年1月18日 10時) (レス) id: fbaaa02cac (このIDを非表示/違反報告)
hhhhhhhhac(プロフ) - 堂前さんの嫉妬みたいな感じのお話みたいです！いつも見させていただいています！ (2022年1月8日 19時) (レス) @page20 id: 62779a0b72 (このIDを非表示/違反報告)
なお - いつもお話楽しませてもらってます！夜遅くにベロベロに酔った川西さんにめちゃめちゃかわいがられるお話読みたいです🥺 (2022年1月8日 18時) (レス) id: 5a42cc6d8b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さかき | 作成日時：2021年8月10日 20時
